2006年12月7日付け
文協貴賓室にある『皇太子・同妃両殿下御肖像画』の来歴を調べて驚いた。現役員からその話を聞いたことがない。かつて安立仙一事務局長から「貴重なものなんですよ」とだけは聞いたことがあったが…▼実は、光と影の華麗なる〃宮永芸術〃で知られる宮永岳彦画伯の代表作だった。神奈川県秦野市には宮永岳彦記念美術館もある。そのホームページによれば、文協の依頼を受けた同画伯は一九七四年、制作に当たって東宮御所で両陛下と面会した▼「何度かお逢いして、その人柄に接し深い感銘を受けた。そのままの感動を表すべく筆を取った。皇太子殿下は威厳を、妃殿下は慈悲を、最も表現したかったのはこの一点である」。画伯はその感動を次の言葉にも残した。「明治・大正・昭和三代の御世に皇室の御肖像画を正式に描いたのは私が初めてであることも感動のひとつである」▼この作品によりブラジル政府から最高勲章グランクルース章を受章。七九年に日本芸術院賞を受賞、八六年には二紀会理事長も務めた。その長いキャリアのなかでも、この肖像画を最も誇りにしていた▼こんな貴重な絵画だという認識を、会員のどれだけが共有しているか。一説によると、この額縁がシロアリに食われた時、文協役員がケチって消毒しなかった、とか。「まさか!」とは思うが…▼〇三年の誕生日祝賀会には百二十人がきた。今年は文協合唱部の三十人を入れて七十人のみ。参加者の一人は「寂しいね、これじゃあ」とぼやいた。百周年に両陛下ご来伯を本気でお願いするなら、美辞麗句を並べるだけでなく態度で表すべきだろう。(深)