2006年12月15日付け
十二日午前九時四十五分ごろ、エスピリト・サント州アラクルス市にある繊維輸出の専用港ポルトセウに、インディオ約二百人が侵入し、労働者を排除した。ここは日伯ナショナル・プロジェクトのセニブラ社(Celulose Nipo-Brasileira S.A.)などが運営しており、専用港全体の一日あたりの損害は七百万ドルに上ると推計されている。
十三日、ニッケイ新聞の取材に対し、セニブラ社のアデルモ・オスカール・コスタ氏は、「侵入されたその日に裁判所に訴えを出し、ミナス州政府、連邦政府に対しても早急に解決するように要請しました」という。
部族による街道封鎖は何度もあったが、専用港にまで侵入したのは今回が初めて。「まだ解決のめどはたっていない」という。
侵入したのは、数年前からアラクルス市の一万一千ヘクタールを「先祖伝来の土地」として返還するよう運動をしているトゥピニッキン族とガラニー族の約二百人。この土地は現在、市販パルプ専業メーカーとしては世界一位のアラクルス社の所有になっている。
今回侵入され操業停止状態になっている専用港は、アラクルス社とセニブラが共同運用をしており、ヴェラセウ、スザノなど大手各社も使っている。この港だけで、全伯の九〇%にあたる年間四百五十万トンを輸出する能力がある。
アジェンシア・エスタード十二日付け記事によれば、トゥピニッキン族のジャグアレテー酋長は「侵入したのは、土地返還への手続きが遅れているからだ。法務省が手続きを始めるまで占拠を続ける」と言明している。
大統領選前の今年八月、法務省はインディオに対して、すぐに土地所有の見直しを始め年末までに承認する、との見通しを伝えていたが、選挙後はほとんど進んでいない。そのためしびれを切らした部族が実力行使にでたようだ。
同記事によれば、アラクルス社は地権に関して、全一万五千頁(十四巻)もの書類をフナイ(インディオ保護局)に提出し、徹底抗戦する構えだ。同社は「このような営業妨害は将来の投資に終止符を打つ恐れがある。この分野だけでなく、国全体にだ」と警鐘を鳴らした。
□ナショナル・プロジェクト「セニブラ」□
七〇年ごろ、日本は高度経済成長にともない製紙原料の確保が問題となり、製紙業界は海外に安定供給源を求めた。大手製紙メーカー、民間十二社が七一年に日伯パルプ資源調査株式会社(後に「日伯紙パルプ資源開発株式会社」に改組)を設立した。
日伯ナショナル・プロジェクトの象徴、セニブラは一九七三年に設立され、ミナス州ベロ・オリゾンテの工場は七七年に操業開始したが、〇一年から一〇〇%日本出資となった。現在の株主は王子製紙と伊藤忠商事を中心とした民間十五社と国際協力銀行という体制。
九六年に第二生産ラインを増設したので生産能力は年産九十六万トンで、同分野では世界三位。現在さらに増設工事を進めており、完了する〇七年四月には年産百二十万トンに達する予定。