2006年12月20日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】国会議員の給与倍増案に対する批判が高潮する十八日、両院執行部でも決定見直しの兆しが見えてきた。レベロ下院議長(ブラジル共産党=PCdoB)は給与倍増を妥当としながらも、下院経費一億五七三〇万レアルのカットや十四カ月目、十五カ月目給料の停止、下院で解雇した一一四三人の役職廃止などを代償とする提案を行った。カリェイロス上院議長(ブラジル民主運動党=PMDB)は、給与倍増案を表決に伏することを了承。両院議長が譲歩の姿勢を示したが、社会大衆党(PPS)の下議四人は最高裁へ倍増案の審理を要請する意向だ。
ブラジルの政界は、国家への貢献有無が問われることはないらしい。給与倍増に始まった宝物の山分けは、愚者と偽善者の論争といえそうだ。「盗った者勝ちで、手段は選ばない」というジェルソンの教訓は、今も生きている。
両院執行部に倍増決定を再考する動きが見えた。下院議長は倍増の代償案を出し、上院議長は表決を認めた。両議長は次期任期に向けて続投に意欲を燃やし、議会執行部の面子を守り、日陰者議員の支持票取り込みで、給与倍増と政治生命を交換したようだ。
給与倍増で喜ぶのは下議だけらしい。上議にとっては、大差のない給与倍増である。上院議長は議会代表役を演じ、給与倍増で手を汚したくないようだ。一方ではフォンターナ下議(労働者党=PT)が、倍増案に対する世論の猛烈な反感を警告した。
ソウザ検事総長は、給与倍増案の違憲性を指摘。議会執行部による議員給与の調整は、前以って予算編成を行い承認後に執行されるものという。政界有力者の一存で欲しいだけ取り、便乗組は一緒に甘い汁へありつき、窓際組は取リ損ねまいと必死にあがくという性質のものではないと検事総長が警告した。
国会議員の給与調整は、手続きに違憲性があれば検事総長が異議を上伸、最高裁が調整を差し止めにすることがある。この場合、差し止め撤回は難しい。最高裁はこの種の調整が議会で表決された場合のみを受理と理解している。
議員の給与倍増に抗議する人々が続出した。サンパウロ市では労働組合や学生連盟が、中心街で市民の呼びかける示威運動を行った。ブラジリアでは年金生活者や軍人の遺族が議会へ押し寄せた。ブラジルの国会は、世界で最もムダ使いをするぜい沢議会であるという。国民の窮状を無視して議会のすることが横暴だと口々に抗議した。
国会は、政治倫理が蒸発したらしい。デウガード下議(PT)は「国会は何でもあり、良識の限度も忘れ怖いもの知らずである」と評した。国会では、善悪も虚実も問われることはない。最も重要なのは、格好よさと国民への知名度だけであると慨嘆した。
大統領府の判断は、国民の支持率に有利か不利かで決まるらしい。選挙高等裁の俎上に上がった人物の処遇や連邦警察の逮捕者釈放は、国民への印象度で決まるようだ。事件が国民に及ぼす影響や結果について、議会が言及することはありそうにない。