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最低賃金は380レアル=来年4月から=大統領、財務省案を覆す=投資促進案発表は延期

2006年12月22日付け

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十一日】政府は二十日、最低賃金を三五〇レアルから八・六%引き上げ三八〇レアルとし、二〇〇七年四月から実施することを決定した。最低賃金の調整実施は二〇一〇年一月まで毎年、一カ月前倒しで行われる。二〇〇八年から最低賃金の調整率は、過去二年間のインフレ率と経済成長率の和で決める。一方、個人所得税(IR)の免税額を二〇一〇年まで毎年四・五%引き上げる。財務省は最低賃金を三六七レアル、IRの免税調整三%に固執したが、マリーニョ労相とマッシャード社会保障相の提案が受け入れられ、大統領が了承した。
 ルーラ大統領は最低賃金の引き上げを優先し、停滞する経済成長の促進は後回しにした。財務省スタッフの新最低賃金拒否で政府内の歩調の乱れが表面化し、経済促進包括案の発表は延期になった。大統領は関係者がクリスマスと正月で浮かれ、経済どころではないので発表を延期したとジョークでごまかした。
 最低賃金の三八〇レアルへの調整は、〇七年度予算に一〇億レアルの追加を意味する。財務省はすでに、三七五レアルで来年度予算を編成していた。IRの免税調整でも譲歩を求められるなら、三八〇レアルの合意を取り消すと、財務省は強硬姿勢を見せた。
 政府内の確執は表沙汰になった。財務相は上院の公聴会で最低賃金の経緯を説明し、不満をぶち開けた。労相とは正面衝突し、大統領が一方的に労相を支援したからだ。
 大統領命令で面子を潰された財務省は、経済成長につながる公共投資でも後退の二の足を踏みそうだ。財務省に打ち出の小槌があると思われている。金を出せ。財政収支は均衡せよ。経済は成長させよ。財源がなければ、さらに搾り取れと情け容赦がない。大統領の態度は過去四年間、財務省や予算管理省に対し冷たく、他省には甘くなった。
 減税による税収減を補う財源がないまま、財務相は労働組合に押された労相案を呑まされた。減税攻勢は、フルラン産業開発相が景気刺激のため建材などへの六億レアル減税を要請したことから始まった。
 財務省の減税案は、産業開発相を激怒させる内容であった。産業開発相の留任が決まったわけではないのに、二次政権での続投を前提とした減税要求を嘲笑するような内容だったからだ。同相は直ちに、大統領と財務相に抗議した。
 予算基本法(LDO)によれば、〇七年は経済成長率七・一%を達成しないと、最低賃金三八〇レアルは支払えないことになる。最低賃金の八・六%調整は、インフレに五・六%の上積みである。
 人口で割った過去三年間のGDP(国内総生産)は、インフレ率プラス五・八%増加した。最低賃金をその間、二九%引き上げた。大統領の第一次政権における倍増公約には、遠く及ばないが努力の跡は見える。その代わり社会保障院の累積赤字は、四六〇億レアルと膨れ上がった。
 最低賃金は〇八年から、小刻み調整にならざるを得ない。社会保障制度を悪化させないよう、経済成長と関係なく社会保障費の増加は、人口で割ったGDPの伸び率と同じでなければならない。ブラジル人の高齢化現象により社会保障費は増加するから、最低賃金は当然減らされる。