2006年12月27日付け
【ヴェージャ誌一九八七号】ブラジル経済が中風状態になってから二十六回目の元旦を迎えた。過去二十五年間、中流階級の生活は向上していない。産業発展の原動力となる中流階級の萎縮は、暗い影を投じる。
それに反し下層階級は、生活扶助金の給付で意気揚々としている。しかし、政府がどんな対策を講じても、下層階級が奮起することはない。また中流階級が上流階級にはい上がるのも困難と見られ、上中下の三階級は、出ることも入ることもなく自分の殻にとじこもっている。
経済が発展している国は、中国やインドのように中流階級が活気に溢れている。イギリスの産業革命や十九世紀の米国など過去の歴史を見ても、中流階級がアイデアと文化の中心であった。これまで中流階級が政治を安定させたといっても過言ではない。
惜しいかなブラジルの中流階級には、その意欲がない。フロイトは一八八三年、許婚者が不思議な労働者の群に感動しているのを見た。彼らは、考え方の立脚点や信仰、希望の目的、労働の意義が違うことに気付いた。普通の人々とは違う価値観と動機を持ち、産業の牽引役として中流階級を構成していた。
中流階級を定義するのは、難しい。世銀や経済研究所、シンクタンクの定義がそれぞれ違う。他の発展途上国との関係で見ると、月間所得三〇〇〇レアルから一万五〇〇〇レアルまでが中流階級といえそうだ。
ブラジルの中流階級が冬眠する間に中国とインドの二カ国は、ブラジル人口の二倍近い二億三〇〇〇万人の中流階級を生み出した。ブラジルの中流階級は年間五カ月を納税のために働き、起業家の出現を官僚主義がジャマをするので、中流階級は増えないといっても誰も信じない。
レアル・プランが実施された一九九四年、インフレが鎮静した反面、昇給も止まり、高学歴も高給の条件にならなくなった。大学卒業者の初任給は最低賃金の三倍に後退。最低賃金の十倍以上を中流階級と考えた時代は終わり、年功序列や査定制度は崩壊した。
不動産税(IPTU)や自動車税(IPVA)の納税総額の七〇%は中流階級が払う。所得税の六〇%も中流階級の懐から出ている。これら税金は、所得格差の是正に下層階級へ生活扶助金としてバラまくので増えても減ることはない。
中国やインドでは経済が繁栄し教育を徹底すれば、自然に貧困は減少すると考えている。しかし、ブラジルの下層階級に自助努力はない。下層階級を教育しても、上層階級へはい上がる者はほとんどいない。
政府が経済成長に力を入れず富を生み出さないなら、誰が生活扶助金や最低賃金の引き上げ分を払うのか。納税者である。政府が経済停滞を看過するなら、公立校は学力低下し、公立病院は食肉加工場になる。中流階級は子息を月謝の高い私立校で学ばせ、高い保健ブランに加入しないと健康管理ができない。
ルーラ大統領は大統領選で、エリート階級と庶民階級に向かって叫んだ。ブラジル社会を貧富の二階級に二分しないで、パンを貧富向けに二分するといった。富者は二分されたパンに不満だろうが、自分で豊かなパンを勝ち取れという。