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身近なアマゾン(21)――真の理解のために=タパジョス川の上流に=今は少ない秘境地帯

2006年12月27日付け

 □経済政策と自然保護の皮肉な関係(1)□
 アマゾン川中流にサンタレンという町がある。
 そのサンタレンの町の前で、タパジョス川という支流がアマゾン本流に合流しており、合流部の川幅の広いことで有名な川だ。
 この川は、対岸まで横断するのに船で一時間以上もかかり、対岸が見えないことからも、その広さの規模が伺えるのではないだろうか。
 このタパジョス川を船で上流に進むと、丸一日でイタイトゥーバという町に着く。この川岸の町から数キロ上流に、船の往来を拒否するように、滝が控えている。滝といっても、落下高度のある日本で考えるような滝ではなく、恐らく地層の断面のずれによってできた数メートルの落差があるだけの、幅の広い滝だ。その落差の滝によって、船が遮断されてしまう。
 この滝の存在から、上流へは大型船が入れないため、滝の上流は現在でも未開の地域のまま現存されている。そういう条件があって、この地域は古代からの原始林が鬱蒼と続き、現在では数少ないアマゾン地域の秘境地帯となっている。
 しかし一方、この地域のすべての河川は砂金の宝庫なのだ。イタイトゥーバの前を流れるタパジョス川は、約二百キロ上流に上ると、川名をテーレスピーレスと変える。このタパジョスからテーレスピーレスに川名が変わる地域が有名な砂金地帯で、現在でもガリンペイロ(金採掘人)たちが多数集まって、タパジョス川に注ぐそれぞれの支流に、やたらにガリンポ(金採掘場)を設けている。
 ガリンポ(金採掘場)の話が出たところで、ブラジルにおけるここ十五年程のゴールドラッシュについて述べてみる。その推移を述べるにあたって、ブラジルの経済状況を若干説明しなければ、理解できないかもしれない。
 一九九〇年のコーロル・プランは、貨幣をクルゼイロ・ノーボからクルザードに切り替えて、同時にデノミであるとか、銀行の資産凍結など、政府政策を発表し、国民感情に関係なくインフレ退治をおこなった。
 「コーロル以前」のブラジルの貨幣経済はめまぐるしく跳びはね、政府の方針であるインフレ政策によって、対ドルのブラジル為替レートが暴騰して、もっとも激しいインフレ時は、銀行金利が毎日一%、というような時代がかなり長く続いた。その時代は、ブラジル国民の間でもブラジル貨幣に信用が全くなくなって、ドルの全盛時代だった。
 当然のごとくアメリカ・ドルの闇為替レートが横行し、プレミアムがついて、その闇レートが公定レートの一〇〇%アップというのは常識だった。この闇ドルという表現はあまりよくないので、ブラジルで現在使われている[平行ドル]とか[平行レート]という表現にする。
 その平行レートが一〇〇%以上という状況を、分かりやすく説明しよう。今から考えれば夢のような話だったのだが、日本への航空旅費で説明すると、当時も現在も千六百ドルで往復の航空切符が買えるのだが、航空運賃は世界に通用する公定レートで計算される。そこで切符購入者がドルの現金を持参して一〇〇%のプレミアムのついている平行市場で交換すると八百ドルで千六百ドルの公定ドル計算のクルゼイロと交換できて、それで切符が買える、という理屈が理解頂けるだろうか。
 政府の規定公定ドルで千六百ドルは、平行市場では八百ドル現金紙幣と同額だった。そんな状況が筆者がブラジルに移住してきた一九七四年から一九九〇年のコーロル・プランまで、およそ十六年も続いた。
 その上、外国旅行する場合は、当時は為替事情から外貨持ち出し制限がされており、それでも五百ドルは公定レートで購入できた。購入した航空券を持って銀行に行くと五百ドルが正規レートで購入できて、その五百ドルを持ってまた平行ドル売り場で換金すると、また五百ドル分のクルゼイロが儲かる、という計算である。
 そんなトリックが重なって、筆者の経験した最も安かった日本行きの記録は、日本航空の個人用割安切符が四百八十ドルで買えた。その四百八十ドルのブラジル―成田―ブラジル往復切符を日本で友人に見せて、「この切符は、東海道新幹線で東京と博多の往復切符より安く買えたんだよ」と自慢した思い出がある。つづく (松栄孝)

身近なアマゾン(1)――真の理解のために=20年間の自然増=6千万人はどこへ?=流入先の自然を汚染
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身近なアマゾン(8)――真の理解のために=同化拒むインディオも=未だ名に「ルイス」や「ロベルト」つけぬ
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