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「極めて困難な作業」=成果失わず、前進できるか

2007年1月1日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・デ・サンパウロ紙ほか】四年に一度、大統領選挙の行われる節目の年だった二〇〇六年が幕を閉じた。新政権が発足する今年は、政界仕切り直し後の今後四年間を占う注目の年と言える。
 新政権発足とはいえ、ブラジル丸の舵を取る船長は、再選を果たしたルーラ大統領に変わりはない。決選投票にもつれ込みながらも、大統領はほぼ六〇%の支持を集め、勝利を手にした。〇五年五月以降立て続けに発覚、選挙直前まで続いた数々の汚職(疑惑)にもかかわらず再選を勝ち取ったのは、大統領のカリスマ的人気はじめ様々な要因がプラスに働いたためだが、何より経済の安定化と貧困対策が勝利を決定づけた。
 ルーラ新政権が誕生した〇三年当初はカントリーリスクが急上昇、レアル相場が暴落するなど不透明な先行き観から経済指標は著しく悪化した。その後、政府はインフレ抑制を主眼とした金融引締め、緊縮財政策を実施。低いGDP成長、高金利レアル高騰など工業界を中心に多大な犠牲を強いながらも、長年の懸案だったインフレ退治に成功。また約一一〇〇万世帯を対象とした貧困家庭手当の支給で北東部始め貧困層の支持を幅広く獲得し、それが再選につながった。
 第二次ルーラ政権は一期目の成果を保ちつつ、経済成長を最優先に、行財政改革、政治改革、社会格差是正、政治倫理確立などの課題に取り組む方針を、選挙公約の形で打ち出している。成長路線への転換を強く求める主要閣僚らの声に耳を傾け、投資促進を目的に企業を対象とした減税案を発表、インフラ整備のための公共投資拡大を目指す一方、中銀総裁は留任させてインフレ再燃に備えた。
 しかし、一期目の緊縮財政路線と二期目で最優先とする経済成長路線の両立は一見矛盾したもので、財政黒字を維持しつつ積極的に財政を出動させるという極めて困難な作業を政府は進めなければならない。それには、財政基盤固め、そして政府経費の削減や社会保障部門の赤字の改善といった行財政改革の断行が求められている。
 大統領は再選直後、赤字が四二〇億レアルに達する社会保障部門の制度改革に対し積極姿勢を示したが、年金支給年齢引き上げなど早くも難色を見せ始めた。公務員給与の調整をインフレ率以下に抑える案の当面先送りを決めた同じ日、上下両院は議員給与の倍増を決定した。
 華々しく理想にあふれた選挙公約と施政方針の貫徹が、今年そして四年後の第二次ルーラ政権の最終評価を左右するカギとなりそうだ。