2007年1月5日付け
バッコン、バッコン──。サンパウロ市アクリマソン区の新潟県人会館に一歩足を踏み入れると、餅米を蒸すムッとする熱気と共に、手で搗く臼と杵の音や、餅を丸めるご婦人たちが談笑する明るい声が響いた。
昨年末の二十九日、三十日に恒例の餅つきが行われ、二百五十キロ近くを搗いた。副会長の柿嶋昭三さん(78)は「予想より注文が多かった。今年は去年の半分しか搗かないつもりだったが、二十九日だけで予想分を全部搗いてしまった」とうれしい悲鳴をあげる。
遠くはグアルーリョス、イピランガからわざわざ買いに来る。三十日には南雲良治会長自ら、サントス厚生ホームに正月の餅を届けに行った。
「年末の忙しいときに家を空けて奥さんに怒られませんか?」と尋ねると、石田芳雄さん(78)は「妻や息子もみんなで手伝いに来てますから。家族も理解してくれてます」とにっこり。「やっぱり正月はお雑煮ときなこ餅じゃないと」と、自ら搗いた餅を十五キロも買っていった。
泊まり込みで手伝いに来ているは、西川忠雄さん(69)。昨年十一月に行われた県人会創立五十周年の折り、西川さんの実弟が来伯し、母県の奨励品種「いちごねばり」を置いていったので今回搗く。「ブラジル産と新潟産の餅米の違いを味わってみたい」。
まる二日間、県人会員二十人ほどが分担して朝七時頃から午後六時頃まで働いた。この収益は新年の会運営費に充てられる。「年末の忙しいなか、県人会のために会員のみなさんがこうして集まって手伝ってくれるのは、本当にありがたいこと」。柿嶋さんは感謝の言葉を繰り返した。