2007年1月9日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙八日】ジェンロ憲政相は七日、サンパウロ州の犯罪組織が全国規模で組織化されつつあり、不法行為の横行が目に余るため、政府は治安対策でサンパウロ州を支援する用意があることを表明した。但しセーラサンパウロ州知事が公式に支援を要請し、活動は州政府の責任において行われることが前提条件という。銃器と麻薬密売、密輸防止は、治安の要諦であると同知事はみている。州政府は犯罪活動の事前対策と諜報活動で、連邦政府の支援を仰ぐ意向のようだ。また州は政府に対し交付金の即時支払いを要請、政府も州に対し支払いの即時決定を促した。
セーラ知事は、サンパウロ市を管轄する連邦警察の機動力強化と連邦政府の諜報機関活用を州治安対策の骨子とする考えらしい。憲政相が、政府は州への治安支援にやぶさかでないと表明。州の治安は州の責任下にあることが原則だから、州が率先して対処することを要求した。
犯罪組織の総司令部は刑務所の中にあることで、犯罪活動の事前対策が刑務所対策にあるという見方もある。政府の交付金遅延で治安対策はいつも後手に回る。実際の治安対策は政府と地方自治体の水掛け論で終わり、銃器と麻薬密売は野放し状態にある。
犯罪撲滅はルーラ大統領の公約であるが、演台上の掛け声だけになっている。州知事らは、大統領が演台から降りて実際に犯罪撲滅に手を貸すよう要求した。連警のラセルダ長官は今年に入り、サンパウロ市とリオデジャネイロ市を手始めに犯罪組織と対決、二市へ諜報部員と特殊要員からなるセンターを設置すると宣言した。
陸軍治安特殊部隊は八日にリオ市へ到着、即時任務に着く。十二日までにリオ全州へ配置され、任地配分も決まる。リオやミナス・ジェライス、エスピリト・サント、サンパウロの各州知事と保安長官、軍警総監は九日、リオに集まり、犯罪組織との対決で担当官から具体的指示を受ける。
リオにおける治安活動はこれまで、定年退職の元軍人や民間警備会社で行っていた。旧軍人が低所得地域を担当し、警備会社が中上流地域の治安を担当した。銃器所持の許可はどちらも得ている。特殊部隊の元要員も、警備員として多数採用されている。犯罪組織とのゆ着により、双方とも収入を得ていた。
元軍人は、警察内の事情と、軍政時代からの責任所在のあいまいな習慣を熟知している。犯罪に対する警察組織の不備がカネ儲けのネタである。盲点に乗じる元軍人とマフィアの相違は、紙一重といわれる。治安対策の根底には、警察官の薄給という問題もある。
マフィアの背後にいる元軍人は、手を汚さないマフィアともいえそうだ。元軍人は民間警備会社にも関係し、法の目をくぐる指南をする。社会学者から見ると、治安の実力者は政府から任命された長官か元軍人か分からないという。
ルーラ大統領は第一期政権の発足時、ブラジル市民は犯罪社会の中で戦々恐々としているので、犯罪防止は一時の猶予もならないと述べた。それでも二〇万人が殺害され、第二期政権へ入った。世銀によれば、ブラジル政府は犯罪に対する無策のため、毎日五億レアルの損失になっているという。