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生活扶助金の対象拡大へ=青少年は18歳まで=237万人の勉学支援=静かに進む社会革命

2007年1月13日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】アナニアス社会開発相は十一日、生活扶助金の受給対象となる青少年の年齢を従来の十五歳未満から十八歳未満へ引き上げる意向であることを明らかにした。青少年らがさらに長期間を勉学に勤しめるよう今月、ルーラ大統領に二提案を献じる。同案が承認されると、さらに二三七万二〇〇〇人の青少年が毎月、三五六〇万レアルの生活扶助金を支給される。生活扶助金で学ぶ青少年は、検定試験に合格すると奨学金を受領する。政府は格差是正を経済成長に優先し、自力で自分の問題を解決できない人々のために生活扶助制度の充実を図る考えらしい。
 現行の生活扶助金制度では、満十五歳から十八歳未満の青少年が受給対象から外されていた。もしも同案が承認されると、受給期間がさらに三年延長されることになる。生活扶助金を受給しているのは現在、一一一万世帯である。
 そこには該当する年齢の青少年が二三七万二〇〇〇人いる。二四%は、日々の糧にも窮する貧困家庭の少年だ。同案が実施されると、各世帯は扶助金五〇レアルへさらに、少年一人につき一五レアルを上積みされる。少年は三人が限度で、それ以上は対象外。
 十五歳から十七歳の青少年は一六%が未就学であるため、生活扶助金の受給期間延長を社会開発省が長年検討していた。この年齢層は、就労が合法化されているためである。もう一つは、十五、十六、十七歳の青少年対策が制度から欠落していた。この年齢層は才能があれば、英才教育を受けてブラジルの未来を背負う有為な人材である。
 現実には、生活扶助金で勉学するのは困難である。誰もが就職の道を選ぶが、月収が学費になるわけではない。薄給といえども、貧困家庭では貴重な生活費である。就職した青少年の月収は、世帯所得とみなされる。世帯所得が生活扶助の対象所得を超えると、生活扶助制度から外され扶助は停止となる。
 しかし、生活扶助制度はルーラ政権の目玉である。ブラジルの経済成長が低迷する反面、所得格差の是正は大統領が使命と思っているらしい。見方を変えるなら、生活扶助制度はブラジルの社会革命だという。多くの底辺層が、飢餓線上から救い出されたのだ。喜ぶべきか悲しむべきか、余り知られていないブラジルの現実といえそうだ。
 底辺の叫びは完全に無視され、ほとんどの国民が知らない。生活扶助金で餓死寸前に一命をとりとめたのなら、立派な社会革命である。爪に火を灯して生活している人たちにとって、最低賃金の三〇レアル上乗せは天の恵みに違いない。紙上を賑わす経済成長は雲の上の話で、日々の糧に一喜一憂している階層のことは忘れられがちだ。
 静かな社会革命が底辺で起きているとは、初耳の人が多いのではないか。ブラジルは先進国と途上国とが混在し、ブラジルの位置付けは難しい。国連は十一日、二〇〇七年におけるブラジルの経済成長率を途上国中下から二番目と発表した。ブラジル経済は、熟睡を通り越して昏睡状態にあるらしい。