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日本語研修事業の廃止案=総務省内で取りまとめ=「本邦研修」なくなる危機=日語セ、反対運動に動く

2007年1月13日付け

 「移住者の子弟や日系人の日本語教師に対して行われている日本語研修事業については(中略)廃止を含めた抜本的な見直しを行うものとする」――。総務省内に設置されている政策評価・独立行政法人評価委員会(丹羽宇一郎委員長)が取りまとめた案には、国際協力機構(JICA)の主要事業改廃について勧告の方向性が記され、「海外移住事業の見直し」が提示された。ブラジル日本語センターの谷広海理事長は九日、JICA本邦研修OB会(宮崎高子会長)の新年会の場で、同案に反対する署名活動を呼びかけており、OB会では今後の理事会で、署名活動の実施について話し合っていきたいとしている。
 評価委員会の案は、和やかな雰囲気で始まっていた新年会の冒頭、谷理事長のあいさつで紹介された。
 「海外移住者に対する援助、指導等については、厳しい財政事情にかんがみ、移住者の定着状況等を踏まえ(中略)役割を終えたと判断したものは廃止するものとする(案抜粋)」。
同委員会は、昨年十一月二十七日に「独立行政法人の主要な事務及び事業の改廃に関する勧告の方向性について」を出しており、JICAが行う海外移住事業に関しての記述はその中で述べられている。
 「海外移住事業の見直し」と題された項目で、農業情報収集などを内容とする調査統計事業、営農普及事情とともに、「特に」と前置きした上で日本語研修事業にふれた。「国内で実施している事業のうち」とあることから、年間三十人強が参加、訪日しているJICA日本語教師研修が対象になると考えられる。
 谷理事長は「現場で働いている先生の現状も知らずに、日本でこういうものが出された。皆さんが協力して、反対の声を上げていきましょう」と呼びかけ、新年会に出席していた日本語教師らに拍手を持って受け入れられた。
 JICA本邦研修OB会はその名のとおり、見直しの対象となるであろうJICAの事業により、日本で教師研修を受けた教師らの集まり。同期同士での絆も強く、OB会主催で指導法などの勉強会を随時行い、教師間のネットワークを作ってきている。
 宮崎さんは、次回の役員会で早速取り上げたいとし「私たちがこうやってあるのも、JICAの研修のおかげ。力を合わせていきたい」と意気込みを話した。
 新年会に同席していた野末雅彦JICAサンパウロ支所次長は「僕も見たことがないですよ」と委員会案に驚きを示しつつも、JICAが行っている日本語に関する方針、助成金事業、ボランティアなどの人材派遣、日本での研修事業の三つは「互いに連携がとれていない」と自己批判。「現地側で『こうしてほしい』と声を上げていかなければ、東京は動けない形になっていると思う。ブラジルで声をあげていってほしい」と話した。
 また、来伯中の中元司郎継承日本語教育センター所長も「これまでやってきた事業がこういう形でなくなるのは惜しい。これからの後輩を日本へ送ることが、OB会の役割のひとつだ」と、励ました。