2007年1月19日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】十二日に発生したサンパウロ市ピニェイロス区でのメトロ工事現場の陥没事故で、陥没の大規模な状況に加え、事故再発の危険性が高まっていることで、不明者の救出作業は遅々として思うように進行していない。こうした中で十七日午前五時四十分ごろ、三人目の新たな遺体が発見され、収容された。遺体は地下鉄工事請負業者の四十七歳の男性で、トラック運転手として従事していた。
救助隊は残り三人の不明者の捜索を続けているものの、事故再発の危険性があるため重機類は使用できず、専ら手作業で行っているため、作業がはかどらないのが実状。これら不明者はこれまでの二人の犠牲者同様、マイクロバスの利用者とみられているが、バスがトンネルの屋根部分のコンクリートで押し潰され、さらに泥土が流れ込んでいることで、引き上げ作業が難行している。
消防によると、後部座席は原型をとどめないほど損傷して泥土に埋まっているという。外部から見る限り、内部に人の面影がないことから落下した際に扉が開き外部に放り出されたものとみて周辺を捜索している。
事故現場で当時働いていた複数の証言によると、轟音が鳴りひびいた直後に緊急避難を命じる合図があったにもかかわらず、死亡した運転手はトラックに駆け寄ったという。しかしその直前まで運転手と会話を交わしていた友人で、同じ従業員の話では合図はなかったとし、運転手は轟音で異変を察し、トラックに身分証明書などの書類を取りに行き、帰らぬ人になったと供述している。
この運転手は昨年十月に同じ路線のオスカル・フレイレ駅で地盤崩れで一人が死亡、一人が重傷を負った事故にも居合わせており、負傷者救出に一役買った経緯があるが、今回は不運に見舞われた。
今回の遺体発見の立役者は消防の捜査救助犬の姉妹で、難行していた発見を見事成し遂げて賞賛の的となっている。救助犬は生後四カ月ごろから、人間の臭いとくに汗をかぎ分ける訓練を受けている。常に二頭一組で捜査に加わり、二頭の探し当てた場所が一致した所を集中的に捜索する。今回の姉妹は七歳犬で、救助犬の停年は八歳となっていることから、最後の奉公となっている。
いっぽうで、二番目の遺体として発見された女性弁護士の葬儀がカラピクイーバ市で十七日に行われ、約一五〇人が参列した。サンパウロ市からセーラサンパウロ州知事、カサビ市長も駆けつけ哀悼の意を表した。残された十七歳の娘と十一歳の双子の男児は涙にくれ、悲しみに包まれていた。