2007年1月23日付け
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十二日】ルーラ大統領は二十二日、第二次政権の公約「経済活性化」法案を財源のないまま上程したと発表した。政府は、ブラジル銀行や連邦貯蓄銀行の株式売却や社会保障院の恩典競売などで資金を捻出する意向を表明。国際金融市場で流動資金がダブつき気味なので、連邦政府は国立銀行の議決権を失わない範囲で株を手放す考えである。二十一日の閣議によれば、二〇一〇年までに官民合同で五〇四〇億レアルの資金投入を行う計画。その五〇%は、エネルギー関連でペトロブラスとエレトロブラスが主体となるようだ。
経済活性化法案の上程は、パロッシ路線への終止符ともいえそうだ。主な内容は、小切手税〇・三八%とDRU(政府資金の二〇%に枠自由化)を二〇一六年まで期限延期。公務員給料に対する福利引当金の制限。公務員の年金特別手当と病気休暇の制限などである。
投資促進のため次の方針を設ける。道路や港湾などのインフラは、予算公布で最優先扱いとなる。企業は、減税分を設備投資に充当。勤続年限保障基金(FGTS)の資金で経済活性化基金を設立。同基金への投資なら、労働者にFGTSの払い出しを許可。住宅建築融資の増額。PPI(パイロット投資計画)の増額。経済活性化への投資に対する税制恩典。
経済活性化の立案委員会は、同時に資金捻出委員会でもある。大統領選では野党候補を民営化論者と位置付けたが、株式売却は国立銀行の一部民営化である。カルドーゾ(FHC)政権が行ったことを、労働者党(PT)政権も続行する。
政府は国際金融の潮流に乗り、国際復興開発銀行(IBRD)や米州開発銀行(IDB)にも打診をする。火の車経済の穴ふさぎ金策ではなく、新規事業への投資相談である。インフラ投資はIDBにとっても食指の動く融資であり、前向きで乗り気らしい。
景気活性化が始動すると、中央銀行は国内資金の吸い上げとインフレ防止のため基本金利の引き下げを中止するに違いない。国内の民間投資家や企業は、遊休資金で一斉に国債を購入するため、奔走することが予想される。中銀は金利引上げで活性化に水を差すか、低金利で活性化優先かの選択を迫られそうだ。
ルーラ大統領は五〇四〇億レアルの資金調達で、州や市、個人などに超党派工作を展開する。約半分の二七六〇億レアルはエネルギー部門へ、五八〇億レアルが運輸部門。残り一七〇〇億レアルは、上下水道や住宅など社会インフラ整備へ充当される。社会インフラは、ポウパンサや地方自治体の出番である。
同法案の主旨は、マンテガ・ロウセフ両相によるパロッシ終焉宣言ともいえそうだ。とはいえ、前財務相の遺産である為替変動制や目標インフレ政策は継続される。埋葬されたのは、小刻み成長の安定経済政策である。まず政府が大型投資を打ち上げ、民間投資がそれに続けという。
ルーラ大統領は二〇〇三年の就任当時、金融市場は疑心暗鬼に満ち、債務はGDP(国内総生産)の五五・五%、為替は一ドルが三・五三レアルであった。このような状態では、財政黒字政策を採らざるを得なかったと述懐した。