2007年1月23日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日、二十一日】国内メトロ史上最大の事故となったサンパウロ市ピニェイロス区の工事現場の陥没事故で、一五〇時間にわたり犠牲者の遺体収容作業に当っていた消防は十九日未明、作業を一時中断した。
これまでに収容した六遺体のほかに、失踪届が出されていた六〇歳の男性(既報では五八歳とされていた)が事故に巻き込まれた可能性があるとみて捜索が続けられてきた。しかし、この男性が利用したとみられるマイクロバス(五人の犠牲者が発見された)が引き上げられた上、周辺の泥土が除去されてトラックで運び出されたのに遺体らしきものが発見されなかったことで、消防では可能性が消えたと判断したもの。
これについて消防の現場指揮官は、救助作業打ち切りは一時的な仮措置で、最終判断は警察に委ねられているとの見解を示している。警察当局ではこれまで運び出された泥土を入念に調べたが手がかりになるものも見つからず、事故に巻き込まれた可能性は薄いとみている。男性の家族は作業の続行を訴えている。
警察では男性の足取りを捜査している。これまでの聞き込み捜査によると、男性は自宅のあるペルジーゼス区の宝クジ販売店に午後一時ごろ現われ、その後ピニェイロス区に向かったとの証言を得ている。しかし事故にあったマイクロバスに乗り合わせたとの確証は得ていない。男性は二台の携帯電話を携行していたが、電源が切られていた。当局は電話会社に通話記録を提出するよう要請したが、これには十五日間を要するとのこと。
関係当局では事故原因の究明を急いでいるが、専門家筋は工事請負業者による土壌の地質調査が不十分で、これが陥没事故の鍵になると指摘している。過去二十五年間で十四件のトンネル工事の陥没事故が発生しているが、その全てが、今回のメトロ工事で使用されたトンネル掘方式で、うち四〇%は地質調査のミスによるものだった。
これによりサンパウロ州の人権擁護団体は、今回の事故は人的ミスによるものだとして、刑事訴訟の対象とするべく専門家などの有識者による調査委員会を立ち上げるべきだと主張している。