2007年1月24日付け
【エザーメ誌八八四号】未来予測は難しいが、過去から割り出したブラジルの経済と産業は二〇〇七年にどうなるか、多くの専門家に考え方や傾向、戦略を聞いてみた。先進国の保護主義に歪められたグロバリゼーションや環境に配慮した省エネ技術、情報産業に密着したイノベーション製品、それを探求する人類は夢とより豊かな未来を求めて挑戦の旅が続くらしい。これからの課題を大きく分類して、次のように整理してみた。一、ものの見方と考え方。二、脚光を浴びる新製品。三、新時代をけん引する人たちの三つである。
【ものの見方と考え方】特記すべきことは、先進国の保護貿易主義がグロバリゼーションにブレーキを掛けたことだ。先進国の間では保護貿易の傾向が益々強まり、国際市場はホンネとタテマエが交差し、貿易自由化は今後悪化する。
自由貿易の提唱者であったはずの米国が、反グローバル化へ寝返ったのだ。十一月の米中間選挙で野党に敗れた米政府与党は、恥も外聞もなく保護主義を強めた。米国民にとって建国の精神などより、自分の生活が大切なのだ。
米国が過去十五年間に締結した通商協定には、どれも保護主義が厳然と存在している。米国は、消費者、投資家、企業、労働者に有利な配当を施した市場を壊すことはできない。これは米国ばかりでなく、EUや日本も同じである。
中国の経済成長は、短期間における資産の産出で民主政治よりも専制政治のほうが、適切という印象さえ与える。しかし、インドは六億七八〇〇人の有権者を抱える民主国家で、ブラジルではマネの出来ない経済成長を遂げている。
同じ専制政治でもアフリカのガボンは、経済成長率が二%に過ぎない。経済成長は政治形態で決まらないという見方の所以である。経済発展で成功した国は、独裁者の上に経済の専門家群が君臨している。インドは専制国家ではないが、中国方式を導入した。
【注目の新製品とサービス】再生可能なエネルギーと環境保全関連品が、大ヒット商品になる。生態系の保全もビッグ・ビジネスである。地球の大気圏保護で活躍するアマゾン熱帯雨林に、ブラジルがどう取り組むのか、世界の環境関係者が注目している。
そのためにブラジルは水力発電所の建設を断念し、牧場の造成も中止した。その代償は、二〇〇億ドルと見積もられる。それをいかにビジネスへ結びつけるかだ。他にエコツアーや自然食品、薬用植物、化粧品原料などの有望なビジネスが目白押しである。
二〇〇七年に脚光を浴びる商品は、インターネットつき携帯電話、マーケティング・サービス、ハイブリッド製品、電気バイク、クーラー飲料、アスレチック計測器つきウエア、スチーム・ドライブ、有機コットンウエア、遊ぶロボット、超格安PC、軽量ノートブック、小型携帯PC、音楽専用携帯など。
【新時代のリーダー】ヴァレ・ド・リオドーセの総師に就任したアギネリ社長のような若手が、これから続々現れる。アンドレ・ジェルダウ(ジェルダウ・グループ)やジョルジェ・レーマン(ロージャ・アメリカナ)、ルーベン・オメット(COSAN)、カルロス・ブリット(Inbev)、カルロス・ゴーン(ルノー・ニッサン)は、産業の傾向の創造者である。
時代の流れを先読みし、一歩先を行ったのだ。これらリーダーの談話には未来へ向けた指針があり、一考の価値がある。労働者党(PT)政権は労働法も税法も改善できなかったが、資本分野では辛うじて合格といえそうだ。ブラジルは今後、資本市場から時代の寵児(ちょうじ)が多数生まれると予想される。