2007年1月25日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】中央銀行の通貨政策委員会(Copom)は基本金利(Selic)の一月調整に先立つ二十三日、経済活性化法案(PAC)の審議に伴う引き下げ圧力を掛けられた。中銀の意向次第では民間資本の前向きな積極参加も期待できるので、マンテガ財務相から公式の打診があった。ロウセフ官房長官は、再三にわたり画期的な引き下げを要求。引き下げ率は現行の一三・二五%から、さらに〇・二五%か〇・五%下げるかにあるらしい。政府は財政黒字をこれまでの四・二五%から三・五%へ引き下げ、従来の四五九億レアルを改め一一二八億レアルをPACへ捻出する考えだ。
中銀の通貨政策委員会が二十四日に審議する新基本金利は、投資の動向を左右する鍵になるとみられる。メイレーレス中銀総裁が、射撃の的にされるのは初めてではない。しかし、今回は財務相とルーラ大統領の名代ともいわれる官房長官たっての要求である。
第二次ルーラ政権の公約の成否は、財務相と官房長官の双肩に掛かっている。経済活性化の反面、資本市場の反応は微妙である。資本市場の動きに大きく依存する財政政策で、基本金利の引き下げが及ぼす影響を大統領に説明する必要があると、中銀はいう。
PACが金利引き下げに拍車を掛けるのではない。基本金利は、ブラジルのマクロ経済と国際金融の関係で決まる。原油価格の下落と中国発の国際的デフレで、金利の引き下げ環境は整ったと財務省はみている。Selicは最終的に中銀が決めるが、引き下げは世界的傾向でもある。
長い間低迷したブラジル経済は、金利を継続的に下げてもインフレにならないと財務省は踏んでいる。PACのお陰で国債購入に資金が移動するなら、財政黒字の削減が需要の喚起に影響を及ぼした結果であると財務省はみている。
資本市場はPACのため、Selicの引き下げ幅で動揺した。資本市場は〇・二五%の小刻みな引き下げと予測したようだ。投資家らは短期金利が横ばい、長期金利は引き上げ傾向と期待している。PACが及ぼす資本市場への影響は、長期的な黒字削減と需要喚起によるローンの増加と所得拡大らしい。
PACが、FGTS(勤続年限積立金)五〇億レアルを経済活性化に流用することで、あわてたのは労組である。三大労組は、PAC暫定令を違法であると最高裁へ訴える手続きを始めた。FGTSは、連邦令により保護されている個人資産だというのだ。
PACが引き起こす為替変動による産業界の反応は、否定的なのがアグリビジネスと輸出関連である。新しい動きに期待するのは、建築資材と工作機械などの資本財、銀行、エネルギー、IT、デジタル・テレビ、半導体、道路管理、輸入関連である。
経済成長が約束された気分のブラジルに、米国のサマー前財務長官は水を差した。構造改革がないブラジルの経済活性化法案は、絵に描いた餅であると酷評した。ブラジルは早晩、計画の拙劣さに気付き、経済成長をあきらめる。ブラジルの外貨準備高八五〇億ドルは分不相応で、インフラ整備に充当すべきであったという。中銀はこの辺の経済感覚が幼稚という批判である。