2007年1月25日付け
百周年記念事業の一つ、マナブ・マベ日伯近代美術館が実現に向け一歩を踏み出す。総工費五百万ドル(約六億円)の二〇%が集まったことにより、昨年末、サンパウロ州政府から工事許可がおり、この二月から工事を始めることになった。実施団体であるマナブ・マベ協会の間部よしの代表は「二〇〇八年中にはオープンできるようにしたい」との意気込む。
同日伯近代美術館の用地は、リベルダーデ区サンジョアキン街にある、九二年に火事で内部が焼失してしまった旧カンポス・サーレス高校の校舎。ジョゼ・セーラサンパウロ州知事、クラウジオ・レンボー前州知事をはじめ、日系人では故野村丈吾元連邦下議ら錚々たるメンバーの学舎だった。
一九一四年に開校した歴史ある建築を修復して、近代美術館に改装する。敷地は約二千五百平米。内部には日伯美術家の展示スペース、彫刻の庭、売店、美術図書館、技術保存室、再生センター、二百五十人収容の講堂、美術学校用アトリエ、カフェテリアなどが設備される。
同館の目玉は、間部家が収集した日系画家の貴重なコレクション展示だ。大竹富江、鈴木悌一、福島近、半田知雄、桧垣肇、若林和男、豊田豊(敬称略)らの作品など数百点にのぼる。
州政府からの総工費の一割に当たる支援に加え、ルアネー法により日系企業からの寄付も増えた。すでに二割が集まったことで工事開始許可もおり、この二月から実際に着工することになった。
よしの代表は「この計画は、我々を温かく迎えいれてたくれたブラジルへの、百周年記念にふさわしい最高のプレゼントになると信じております」との期待をあらわした。
かつてノーベル文学賞を受けた川端康成は、東京で行われた間部の展覧会に「それは伝統、神秘、東洋の象徴主義とブラジルの自然界にある生き生きとした色の融合から生まれた美である」との言葉を寄せた。
歴史的建造物を再生して、日伯近代美の入れ物とする今回の構想。間部氏の芸術観を立体で表現するものになるかもしれない。