2007年1月27日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日、二十六日】十二日に発生したサンパウロ市ピニェイロス区のメトロ工事現場の陥没事故で、消防は二十五日午後九時ごろ、新たに六十歳の男性の遺体を収容した。これにより、これまでに収容された六人の遺体と合わせ、今回の事故による犠牲者は七人に上った。
七人目の犠牲者は、警察はじめ関係者の間で、事故に巻き込まれた可能性について意見が二分されていた。これまで発見された六人のうちトラック運転手を除く五人が穴に落ちたマイクロバス車内で発見されたにもかかわらず、七人目の犠牲者もバスを利用した可能性が高いと見なされていた。
しかし引き上げられたバスの車内はおろか、撤去された周辺の泥土から何の手がかりも発見されなかったことで、消防は事故と無関係との見方を強めて遺体収容作業を一時中断した。
警察内部でも同様の見方が大半を占めたが、家族の強い要望もあって男性の足取り調査が開始された。関係者の聞き込み調査と携帯電話の通話記録から、事故に巻き込まれたと断定、遺体収容作業が再開された。
警察の調べによると、男性は事故現場脇のビルに入居している会社の雑役係(主にメッセンジャーボーイ的業務)として勤務しており、事故当日はペルジーゼス区での銀行支払を終えて会社に戻り、仕事賃の二〇レアルの小切手を受け取って事故直前に現場の方に歩いていったことが目撃されている。この小切手が銀行で換金されていないことも決めての一つとなった。
作業を再開した消防はバスの周辺で遺体を発見した。遺体は道路標札に電線がからまった状態で、路上からこの状態で落下したとみられている。この遺体は二番目の遺体発見と同様、救助犬姉妹のお手柄だった。遺体発見の一時間後、セーラサンパウロ州知事が現場に姿を見せ、消防の努力と救助犬の活躍に賛辞を贈った。いずれも表彰するという。
三人の遺児を残し、二番目に遺体で発見された女性弁護士の遺族は、保険会社と五〇万レアル(推定)の賠償金で示談に応じたことを明らかにした。金額はあくまでも推定で、家族の安全のための守秘事項となっている。遺族らは金額の多少にかかわらず、子供達の将来設計のために、早めの示談に応じたとの考えを強調している。
その筋の専門家によると、裁判で係争すると十年以上の歳月を要するとのこと、例を挙げると九年前に発生したリオデジャネイロ市のマンション崩壊事故で八人の犠牲者の遺族は本日現在、二〇%相当の賠償金しか支給されず、裁判が続行している有様となっている。