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政府に頼ってはならない=中銀元総裁が訴え=「発想貧しく何もできない」=求められる社会改革

2007年1月31日付け

 【ヴェージャ誌一九九一号】中央銀行のアルミニオ・フラガ元総裁は、ブラジルの経済改革が頓挫していることで、国民は政府に何も期待せず自分の人生は自分で切り開くよう呼びかけた。ブラジルではポルトガル植民地時代の習慣が根強く残っていて、政府は何でもしてくれる母親のように思っている人が多いと慨嘆した。政府は発想が永久に貧しく、何もできないのだ。経済が過去二十年間、停滞した原因もここにある。第二次ルーラ政権は、世界の波に乗れず改革もできない。政府依存のメンタリティは一日も早く改める必要があると訴えた。
 次は中銀元総裁が国民のために鳴らす警鐘だ。
 【好調な国際環境は】中国とインドの覚醒により、世界は数億人の中流階級を抱え、大消費市場を形成した。経済が好調な期間は、中国とインドが活況を保つ間続く。好況終焉の予兆は見えないが、米国の巨大な貿易赤字と不動産バブルという黒雲が地平線に見える。もしも、米国がリセッションに入るなら、世界経済へ及ぼす影響は大きいと思わねばならない。
 【ドル通貨の暴落は】最近の資料によれば、EU通貨が世界各国の中央銀行に基軸通貨として準備されているので、ドル暴落のショックを和らげると思われる。EU通貨のほかに人民元も国際通貨に躍り出る可能性がある。いずれ遠い将来、ドル通貨は基軸通貨の地位を失う。
 【ルーラ大統領の経済活性化PACの行方は】時間をかけて効果を表すが、いまのところ経済成長を達する可能性はない。経済成長には、政府経費のカットや投資促進、教育という前提条件がある。前提条件は生産性や国際競争力という形で成果が現れ、成長に結びつくものである。
 現政権には一期、二期とも、その意欲が見えない。民間活力の妨げになっている政府の大言壮語は、留まりそうにない。経済環境の整備や労働法改革、税制改革などのファンダメンタルスは無視されている。政府は二年位なら、マヤカシの経済成長で国民をごまかすことはできる。
 現在、ブラジルには大きなチャンスの窓が開かれているが、無駄にする可能性がある。諸改革を実行するなら、政権初期に決行すべきだ。しかし、その気配はほとんどない。低生産性にありながら大ボラばかり吹いて、現実を認識するときは手遅れだ。経済成長のヴィジョンがまるでない。
 【生産性を上げる法は】まず教育への投資。人材を発掘せずに高付加価値商品の生産はないし、グローバル市場で競争のしようもない。ブラジルの教育は、英才教育に向けて抜本的教育改革をする必要がある。国民に貯蓄を奨励し、投資を促すこと。それにアングラ市場を消滅させる税制を取り入れること。
 【低金利と為替改善で経済は復活するか】それはない。基本金利は政治的配慮で操作できないし、経済成長は経済改革で達成できない。経済成長論者のいうことは、論旨に無理がある。経済成長に反対する者はいないが、成長したくて成長できるものではない。
 人為的に環境を整えてもある期間、回復様相を見せるだけ。すぐにインフレとリセッションがやってくる。本物の経済成長は国民の貯蓄と、教育を受けた人材を発掘することに支えられる。経済の基礎条件が整備されずに、金利と為替だけで経済回復はない。
 中国を例に引き出すのは無知に等しい。低収入の中で中国人が貯蓄に注ぐ努力を知るブラジル人は少ない。中国の貯蓄率は、GDP(国内総生産)の四〇%。ブラジルは二〇%しか貯蓄せず、政府の無駄遣いは止まない。
 【改革が困難な理由】ブラジルの改革は政治や経済の改革だけでは不十分で、社会改革という文化革命が必要だ。政治家は金融取引のように短期間で改革の成果が得られないので、決断に踏み切れない。国家発展のために、個人の利益は後回しにすること。ブラジルには無数の団体やグループがあって、利益確保に奔走する。ロビー活動などで自分だけの利益が先行し、改革は後回しにする。
 【過去数年の教訓は何か】色々ある。安定経済がインフレを沈静させ、金利を引き下げ、営業形式の改善を来たした。資本市場は、一獲千金のカジノから金融市場へ変革した。資本市場は、生産奨励の役目を分担するようになった。企業経営がしっかり管理されていれば、容易に資本調達ができるようになった。
 【文化革命とは何か】ブラジルでは文化革命が死語になっている。世界という歯車の一つという認識も欠けている。政府に頼らないという認識が必要。誰が政権を採っても、誰も助けてくれない。政府への甘えは、ポルトガル植民地時代の悪弊である。帝政時代の考え方は貧しく、永遠に豊かになれない。良い例が、大統領選の決選で行われた民営化非難と改革回避だ。

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