ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 社会保障制度の改革急務=財務相、意欲示す=経理処理で赤字の一部削減=掛け金ない年金を別扱い

社会保障制度の改革急務=財務相、意欲示す=経理処理で赤字の一部削減=掛け金ない年金を別扱い

2007年2月1日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙一月三十一日】ロンドンの国際金融会議に出席したマンテガ財務相は三十日、社会保障制度の改革が急務であると強調した。同制度の支出の一部である老齢年金や農村労働者年金を、国庫庁の管理下へ正式に移す意向を財務相が表明した。社会保障院の累積赤字は、行政手続きの範囲で一八〇億レアル削減できると述べた。同年金は掛け金を納付せずに給付されるもので、ルーラ大統領が社会政策の一環という支出だから、社会保障院の赤字とするのは妥当でないとした。ロウセフ官房長官も、同支出は政治的配慮であり社会保障院とは無関係だと表明した。
 財務相は社会保障制度の変更ではなく、改革という表現を使った。社会保障院の累積赤字に懸念を示すロンドン・シティの国際金融会議の席上、マンテガ財務相が声明を発表した。単なる経理上の手続きで、一八〇億レアルの赤字を解消できる。管理の移動に関する仮処分は、財政上の問題ではないと述べた。
 掛け金の納付義務が課せられない農村労働者年金や農業生産者年金、老齢年金、メイド年金、個人経営者年金、その他暫定令の対象年金は、管轄が社会保障院から国庫庁へ移される。財政政策の基礎的財政収支の対象外となる。これは、第二次政権の社会保障制度改革の一環だという。
 事実上は、変更でも改革でもない。単なる経理処理の問題に過ぎない。しかし、社会保障院の制度改革は、寝る子を起さないように少しずつ慎重かつ周到に行なわれる。経済活性化法案について国際金融が具体案がないと指摘するのは、社会保障院の累積赤字対策に触れていないからだ。
 ダボスの経済フォーラムでも、ルーラ大統領は同問題で突っ込まれた。社会保障院の収支は二〇〇六年、歳入一二三五億レアルに対し歳出が一六五五億レアル、赤字が四二〇億レアルであった。赤字のうち一八〇億レアルは、手続き操作によって削減できるという。
 政府は、同改革に向けた政治取引の下書きつくりを始めた。手続き操作でさらに赤字解消の可能性を模索する社会保障院のマシャード総裁は、改革を暫定令にするか法案にするか、改革のキーマンは誰か、最終段階に至ってないという。手続き操作の合法性を連邦令に照合する必要もある。
 政府は社会保障問題を解決するため、保障制度と赤字を切り離して扱うようだ。赤字は社会政策のツケだという。国家へ無形の富を築いた人々への報酬というのが、現政権の考え方らしい。
 二〇〇六年度の社会保障院収支に、四二〇億レアルの大穴が開いた。大穴は、同年度に徴収した小切手税を上回った。農村労働者年金は一九八八年、連邦令制定とともに社会保障院システムの中に組み込んだ。さらに一九九三年、老齢年金も同様扱いにした。
 この措置は社会政策の誤算ではないか。寝ていても六五歳になれば、最低賃金相当の年金が十三カ月分もらえる制度である。連邦令に謳うまえに、社会政策の一環として社会保障制度から外すべき支出であった。社会保障制度改革の本丸は、時間をかけて溶かして行くしかないらしい。