ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 前官房長官特赦をけん制=大統領=「頭痛のぶり返し」=実力者の復権を恐れる=多数派は最高裁へ根回し

前官房長官特赦をけん制=大統領=「頭痛のぶり返し」=実力者の復権を恐れる=多数派は最高裁へ根回し

2007年2月7日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙六日】ルーラ大統領は五日、ジルセウ前官房長官の特赦運動への大統領府の関与をけん制した。五日の政策会議に臨んだ大統領は、経済活性化法案(PAC)の成立が優先であることを強調し、ガルシア前労働者党(PT))党首を中心とする前官房長官の復権に向けた動きへ歯止めを掛けた。大統領府が同運動に参加することを事実上禁じたといえそうだ。政府内の信頼できる筋の情報によれば、大統領は実力者の前官房長官が復権するのを恐れ、裏金疑惑の責任者として人身御供にする考えだったという。前官房長官は復権を妨げるなら、誰に対しても報復する可能性を示唆した。
 下院議長選挙でルーラ大統領は試されたようだ。キナリア下議の議長立候補を巡って、大統領と党は土壇場まで対立した。大統領と大統領府が当選に向けて尽力したレベロ下議は、僅差で敗走。ここから大統領の作戦はほころび始めたらしい。
 ルーラ政権の実現で立役者となった前官房長官の復権は、頭痛のぶり返しともみられる。ルーラ大統領は、主だったPT議員とともに前長官の復権阻止を画策した。前長官の復帰は党内多数派を取り込み、多くの議員が恫喝(どうかつ)される可能性があるからだ。
 前長官の腹心ヴァカレーザ下議やザラチニ下議は、釈明のチャンスを与えられることなく葬られたジルセウ氏にPTは借りがあるという。これから前長官の特赦署名運動を全国レベルで展開し、国会審議にこぎつける計画のようだ。
 国会議員らは、特赦が議員権はく奪より容易と思っている。特赦の署名運動は五州で有権者の一%以上を獲得すればよい。国民レベルの署名運動というのが、ミソである。国民を煽動する方法はいくらでもある。
 しかし、PT多数派は前官房長官の議員権見直しを最高裁審理による判決に賭けている。最高裁の審理で前長官に対する疑惑告発は立件されなかったという。前長官も国会審議を敬遠している。最高裁のメーロ判事が、最高裁判決も国民の意向によるところが大きいと語った。
 最高裁への根回しは、前長官の弁護士を通じて行っている。前長官は官房室時代、最高裁との人脈を作った。最高裁は六月までに、検事総長の起訴の是非を決める。他に労組が総力を上げて国民運動の展開を約した。
 ブラジル弁護士会(OAB)は、前官房長官の特赦を「こじつけの工作」とみている。もし特赦が認められるなら、政治の魚の目のようなもので民主主義の後退という。OABのブリット会長は、国民がこんな小細工を許すとは思えないし、議会も国民の気持ちを察すると述べた。
 サンロッケ市で気勢を挙げたPT多数派会議は、アジト会議のレベルであって、犬の遠吠えか線香花火に終わるとOABはみている。発会の動機に無理があり、世論の流れを形成するには至らないという。新議会は旧議会とは流れが異なり、経済活性化で一致している。前官房長官の政治スタイルは過去のものになりつつあるといわれる。