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世界トップの労使係争件数=年間200万件に=欠陥だらけ時代遅れの労働法=調停のチャンネル作りを

2007年2月13日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】労働高等裁判所(TST)は十一日、ブラジルの労使訴訟が年間二〇〇万件に上り、世界最高水準の係争国であることを明らかにした。二〇〇五年は、使用人に支払った補償額が七一億九〇〇〇万レアル。〇六年は九月までに六一億三〇〇〇万レアルに達し、月平均で前年比一三%増となった。外国では米国の労使訴訟が年間七万五〇〇〇件以下。フランスは七万件、日本はわずか二五〇〇件である。社会学者パストーレ氏の見解では、ブラジルの労働法が欠陥法で現実に沿わない超時代遅れであるためという。
 ブラジルは、また恥ずべき世界一のタイトルを獲得することになりそうだ。年間二〇〇万件という労使訴訟は、ブラジルの労働市場に混沌という看板を掲げたようなもので、法整備の欠落であると専門家はいう。二〇〇万という数字が欠陥法を表示し、ブラジルがグローバル時代入りするにはふさわしくないことの証拠といえる。
 パジアノット元労働高裁裁判長は、労働裁判所の質低下を訴えた。労使係争国は、労裁が取るに足らぬことを受理する結果だとみている。労使関係の改善は、労働者の権利を奪うものではないと同元裁判長はいう。外国では法廷外取引のメカニズムを用い、仲介と調停を奨励している。
 ブラジルでは、仲介と調停のチャンネルつくりが停滞している。産業発展の妨げである労働法の改善遅滞ぶりは、関係者の覚せいが必要である。訴訟が上訴手続きで複雑になると、訴訟が七年や十年と長期化する。労使提訴の半分は、第一審で決着がつく内容のものであるという。
 しかし、裁判官が怠けているわけではない。問題は労働者をあおりたてる内容の労働法にある。企業は労務対策として、労働法を悪用した提訴を反論できる専門家を雇い、不当な審理に対処している。他の対処法として、株式の公開がある。企業の規模拡大により、訴訟負担の割合を小さくすることだ。
 従業員採用による厚生福利引当金など企業側負担の過重により非正規雇用が増え、訴訟増加につながる。ブラジルの輸出産業は、国際市場で時代遅れの労働法が足かせになり、国際競争力が低下している。
 最も顕著な例が港湾だ。ブラジルの経済活性化を叫ぶ一方で、港湾システムがマヒ状態にあることを見落とせない。港湾公団は経営難の上、歳入の七〇%が労使訴訟に食われている。しかも、訴訟は解決の目途が全く立っていない。
 港湾労働者の公団に対する訴訟は六〇〇〇件に上り、七億五〇〇〇万レアルである。港湾公団が窮状から脱する法は、インフラ整備と人員整理という。輸出入の玄関口での頓挫は、国家問題である。運輸省は、専門家を雇って港湾システムの近代化を検討中だ。
 港湾の問題は、訴訟債務率の縮小では解決できない。労働者の提訴動機の解明、原因の根治にある。それをしないと、オンブにダッコで悪循環は続く。最悪の状態は、南米最大港のサントスにあるサンパウロ州港湾公団。訴訟件数は増えても減ることがない。労裁は、港湾公団の全歳入を差し押さえる可能性さえある。