2007年2月17日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】これまで懸案となっていたブラジルへのボリビアの天然ガス供給価格が十五日、両国大統領のトップ会談で妥結し、契約書が取り交された。両国間の天然ガス問題は昨年五月、ボリビア政府が突如天然資源設備の国有化を実施して以来、ガス価格を引き上げんとするボリビア側と、これに抵抗するブラジル側との間で平行線をたどってきた。
これを憂慮したボリビアのモラレス大統領が十四日、急きょブラジルに乗り込んできてルーラ大統領との直談判の形となった。これを受けてルーラ大統領もトップレベルでの妥協を目指す意向を示した。それまでは両国の国営石油公社が交渉の窓口となっていた。
新規取り決めによると、表面の輸入価格は一〇〇万BTU(英熱量単位、天然ガスの国際数量基準)当り四・二〇ドルとこれまでの契約値を維持するものの、上質成分ガスの混合分に対し、国際価格に準じて追加支払いを行うことになった。
ボリビア側は当初、価格を一律五ドル以上にすることを主張していたが、今回の取り決めで理論的にブラジルに譲歩したものの実質的に本来の目的を果たしたことになる。同国の鉱山省筋では、上質成分のみで一億ドル以上の追加収入になると手放しで喜んでいる。
これに対しブラジルの鉱山エネルギー省筋では三%から六%の追加支払いと反論している。しかしアナリストらは、ガス成分の分析機関や施設の投資で従来の一〇%高になるとみている。
さらに現在日量二六〇〇万BTUが輸入されているが、その需要のほとんどが火力発電や工場のボイラー用などのいわゆる低質のメタンガスであり、上質成分のエタン、ブタン、プロパンガスの需要が浸透していない。今後これを利用した化学製品やLPG(家庭台所用プロパンガス)の需要開発を強いられることになるが、当分の間は上質成分のガスは宝の持ちぐされになると指摘している。
モラレス大統領の積極外交に屈した形となったルーラ大統領は、今回のトップ会談の妥協について「帝国主義ではない」とした上で、「隣のアミーゴ」との友好関係を維持するための手段との考えを強調した。その上で、両国間でいくつかの共同プロジェクトを推進していく方針を明らかにした。
一つは国境沿いのマデイラ川に水力発電所を建設、さらにブラジル北部と結ぶ国道を建設する。また五〇〇〇万ドルを投じ、大豆を原料としたバイオ燃料を開発する。大豆はボリビア領で生産しているブラジル人農家のものを使用する。さらに三〇億ドルを投じてペトロブラス主体のガス科学コンビナートも設立する。このほか口蹄疫などの防疫で共同体制を確立することなどが挙げられている。