2007年2月17日付け
【既報関連】パラグアイ、ラ・パス移住地の日系二世、星あゆみさん(26、大阪へ留学中)が十一日に神戸で行われた「NHKのど自慢」に出場し、見事、優勝を勝ち取った。九百組強の応募者から二十組の本選の出場者が選ばれ、あゆみさんは、本選で合格の鐘が鳴った四組の中のトップ(神戸大会のチャンピオン)に輝いた。優勝に喜んだ翌日、パラグアイの家族から「のど自慢」の予選出場が決まった日に母方の祖父が亡くなったことを知らされ、あゆみさんは「優勝できたのは天国のおじいちゃんのお陰だ」と語っている。
幼い頃から祖父母とともに欠かさず見てきた「NHKのど自慢」。日本に行ったときにはぜひ出場したいという思いは現実となった――。
「八十四歳のおじいちゃんはもう高齢なので、もう日本の地を踏む機会はないでしょう。孫である私がNHKのど自慢に出場したら、おじいちゃんは泣いて喜んでくれる」。
あゆみさんはパラグアイへの思いを込めて、昨年亡くなった祖母が大好きだった坂本冬美の「あばれ太鼓」で、本番に臨んだ。
会場には二千人の観客。パラグアイへも生中継されている。十一番目に歌ったあゆみさんは「予選会よりも緊張しましたが、悔いなく思いっきり歌うことが出来ました」。一緒に来場した友人らもパネルを持って一生懸命応援していた。
優勝の発表を聞いた時には「おじいちゃん、やったよー」。割れんばかりの拍手の中、パラグアイであゆみさんの出場を何より心待ちにしていた祖父へ、感激のメッセージを送った。
祖父母と幼かった父親がパラグアイへ旅立った神戸の地での、のど自慢優勝に、パラグアイの家族一同も喜びに沸いた。
母方の祖母、ミチコさんは何時間も前からテレビの前で「のど自慢」の開始を待ち、父方の祖父、三郎さんは番組が始まると手をたたきながら応援。あゆみの出番がくると家族なんなが、うれし涙を流した。
あゆみさんは、優勝決定後の日本時間午後三時、パラグアイ時間の午前三時に、パラグアイとの国際電話で、家族に優勝の喜びを伝えたという。
「あゆみがのど自慢で優勝できるようにおじいちゃんが天国から見守ってくれていたのよ」。母方の祖父ヒデアキさんは、あゆみさんが「のど自慢」の予選出場を決めた翌日の七日、入院先の病院で亡くなった。ヒデアキさんは「のど自慢」への出場を楽しみにいたという。
家族はあゆみさんを気遣って内緒にしていたが、あゆみさんは出場前、「おじいちゃんが入院しているのに、自分だけがのど自慢にでて笑っていてもいいのだろうか?」。「おじいちゃんは大丈夫だから」との母親の言葉をもらって、本番に臨んでいた。
ヒデアキさんには優勝の喜びを伝えられなかったが、「おじいちゃんが見守ってくれた。優勝できたのはおじいちゃんのお陰だ」とあゆみさんは話している。