2007年2月22日付け
日本にあるブラジル人学校が九十八校に増えていることが分かった。外国系としては日本最多と言われる朝鮮学校の百校に迫る勢い。その背景には「日本の学校に適応できない」という事情があり、増加を単純には喜べないようだ。来伯した甲南女子大のリリアン・テルミ・ハタノ助教授に話を聞いた。
昨年十一月に愛知県で行われた「多民族共生教育フォーラム2006愛知」で在日ブラジル人学校協議会(ヨシムラ・ジュリエッタ代表)が発表した内容によれば、同十月現在で九十七校あり、うちブラジル教育省(MEC)に認可されているのは五十校、未認可は四十七校。
MEC公認校のうち、日本の文科省からも指定校とされているのは三十三校で、十七校が非指定校だ。指定校に認められると卒業生は日本の大学入試を受験する資格が得られる。
同協会(AEBJ)発表によれば、最初のブラジル人学校は九五年創立で、〇〇年十二月には十四校、〇四年三月現在で計六十三校(うちMEC公認は三十三校)。特に〇〇年以降に激増した。
同フォーラム基調報告によれば、南米にルーツを持つ子供の「ほぼ半数が日本の学校、三割ほどが外国人学校、そして二、三割が不就学状態」と推計している。同三割にあたるブラジル人学校の生徒数が九千八百六十九人だ。
学校教育法に定められた通常の学校「一条校」と、日本の文科省のカリキュラムを教えない外国人学校では、待遇がまったく異なる。大半のブラジル人学校は私塾扱いであり、私学助成も免税処置も受けられず、苦しい経営を強いられている。
その経費がすべて授業料に上乗せされ、一月で四~五万円という高額になっているにも関わらず、依然として学校は増えている。日本の学校に適応できず、ブラジル人校の高い授業料を払えない子弟が不就学になっていく傾向があるようだ。
「一条校」とは別、自動車学校などと同じカテゴリーの「各種学校」として近年、二校の外国人学校がようやく認可された。
南米系校としては初だった、〇四年十二月に静岡県浜松市に認可されたペルー人学校ムンド・デ・アレグリア。昨年十一月には岐阜県大垣市のブラジル人学校として初めて、HIRO学園が同認可をえた。現在、もう一校が申請中。
教育問題に詳しい甲南女子大多文化共生学科のリリアン・テルミ・ハタノ助教授は、同フォーラム報告後に「もう一校増えています」と補足する。つまり九十八校だ。このようなブラジル人学校増の背景には「日本の学校に頼れないから新しいブラジル人学校が増えている」と解説する。
日本の学校に入れても、「子供が日本語だけになっていく姿に親は不安感をおぼえる」という。大半のブラジル人校における日本語の授業は週に二時間がせいぜい。逆に日本の公立校は日本語だけで、外国人である父兄の持つ文化を尊重する状態ではないので、共に問題を含んだ状態だという。
ハタノ助教授は「解決策はバイリンガル校だと思う」と提言する。そこから二つの社会をつなぐ人材を育てる。さらに「市町村などの自治体レベルの個別対応はあっても国としての政策がない」点も強く訴えた。「日本の学校が変わらない限り、まだまだブラジル人学校は増える」。