2007年2月23日付け
健康なまちづくりをブラジルでも――。国際協力機構(JICA)は、ペルナンブッコ州内で、行政と市民が協同して健康の向上、生活の質の改善に取り組む「健康なまち」をつくるプロジェクトを行っている。清掃活動やワークショップを通して、住民の衛生管理への意識改善を実現するための仕組み作りを目指す。五カ年計画のプロジェクトが始まってから、現在で三年と四カ月。同プロジェクトのチーフアドバイザー、中馬潤子さんは「人からもらうことに慣れている人の意識を変えることは難しいけど、人材が育てば継続していく」と、プロジェクトの成果に期待を込めた。
人々の「健康」とは〃病気でないこと〃だけに留まらない。生活の質を高め、病気を予防できるような暮らしを実現するため、まち全体を良好な環境につくり変えること、それを〃健康なまちづくり〃と呼んでいる。
世界保健機関(WHO)がヘルスプロモーション(Health Promotion)という言葉で概念を表現し、ヨーロッパが起源となって、日本でも、百二十から百三十の市町村で実施されている手法だ。
中馬さんは「JICAは二十年以上ペルナンブッコで活動しているんですね。研究所を作ったり、準看護士を養成したりして医学の技術レベルは上がったのですが、市民に衛生感覚が広まらなかった」。
東北伯では、衛生観念の乏しさから、寄生虫などが原因となる病気が蔓延し、栄養状態が悪いことと相まって乳児死亡率が高い。また、地域住民の教育程度の低さも状況の悪化に拍車をかけているという。
ブラジル国内では、クリチーバが「健康文化都市」として有名だが、計画的にヘルスプロモーションを取り入れたプロジェクトが行われるのは、今回が、国内で初めてだ。
〇三年十二月から同州内の五つの市を対象にプロジェクトを開始。行政機関や大学を巻き込んで、地域には何が必要なのか、を住民が考えて行動できるような仕組みを作る。
町の清掃活動を行ったり、健康な食事内容や、高血圧や心臓病などの病気、障害者についてのワークショップを開催してきた。
「ものをもらう感覚に慣れている人たち。最近ようやく、お金にならなくても、人に認められることや信頼関係を築くことの意義を認識する人が出てきたというところ」と中馬さん。
〃まちづくり〃には、生活の当事者である住民の積極的な参加と、保健だけに限らない行政の様々な部門の連携が重要となる。「公的なものに対しての不信が減少できれば、とのねらいもある」「町がきれいになったから、病気が減ったなんて声もあります。五年の期間が過ぎても(活動が自発的に)続いていくように、町の人材を育てて仕組み作りができればいい」と言う。
プロジェクトの結果が、即座に目に見えて明らかになるわけではない。「自分たちの暮らしを自分たちで変えていこう」という意識が根付いてこそ、成果。「パイロット地の五市で活動を深めることと、五市以外にどう広げていくかが、これからの課題です」と中馬さんは、残る一年半余の活動を見通した。