ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

2007年2月23日付け

 近着の俳誌『蜂鳥』を開いたら、「千の風になって」の歌詞付き楽譜がはさまれていた。同誌代表の富重久子さんの厚意の付録であった。もうコロニアでも多くの人たちに口ずさまれているに違いない歌である▼日本では〇四年あたりから、一部の歌手によって歌われたが、爆発的にヒットし知名度を上げたのは昨年暮れ、テノール歌手の秋川雅史さんがNHK紅白歌合戦で歌ってからである▼歌詞をみると、亡くなった人が生きている最愛の人たちを風になって見守っている、という内容である。今流行りの表現をすれば、死者による癒しの歌とでもなろうか。「私のお墓の前で/泣かないでください/そこに私はいません/眠ってなんかいません/千の風に/千の風になって/あの大きな空を/吹きわたっています」。美しい旋律(新井満作曲、日本語詩も同氏)だ。歌曲を少しでも好きな人なら、例外なく、魅せられてしまうだろう▼さきごろ夫かずまさんの一周忌法要を営んだ久子さんは「亡くなった主人が私の傍で一緒にこの詩を囁いているように聞こえる。そうだ、貴方は死んでなんかいない、とそんな錯覚を起こしてしまう」と『蜂鳥』に書いた。そして沢山の人々にこの詩を読み唄っていただけたら嬉しい、とすすめる▼自身の周辺に新しい死者がいる人はもちろん、古く親しい人を亡くした人も、「千の風――」には、それぞれの思いを抱くことだろう。コロニアでも当分、この歌がしっとりとだが、熱く流れるような気がする。(神)