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「左傾化、実像を見よ」=JETRO渡辺所長=ベ国に留意促す

2007年2月27日付け

 ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)は、十四日、JETEROの渡邉裕司サンパウロ事務所長によるセミナー「中南米政権『左傾化』の潮流~その虚像と実像~」を開催した。
 中南米には、十カ国(ニカラグア、キューバ、ベネズエラ、エクアドル、ブラジル、ペルー、ボリビア、チリ、ウルグアイ、アルゼンチン)の左派政権が存在しているが、渡邉氏は「社会主義経済化の動きはなく、政権の政策実行内容をよく検証するべきだ」と提言し、ベネズエラのチャベス政権への注意を促した。
 渡邉氏は左傾化の背景を説明。資源開発をもとにした資本集約的な産業に雇用の限界があることや、グローバル化による地球規模の競争から、富の偏在や流出、不均衡な再配分が起こったことを理由にあげた。
 貧困や格差の問題が未解決の現状に、「反グローバリズム」の流れが出現。中国やインドなど資源を〃ガブのみ〃する国が登場しての資源価格の高騰を受けて、資源はホスト国が管理し、利益享受すべきとする資源ナショナリズムの考え方が支持を得るようになった。
 しかし、渡邉氏は「左派政権は、過去のマルキシズムは問題を解決しないことと、市場経済と対米関係が不可欠だということを理解していると推定する」と注をつける。
 左傾化による影響は、強力な政権が「大きな政府」となり、財政赤字などの構造問題をもたらしかねないこと。渡邉氏は政権の持続性に疑問を呈した。
 また、企業戦略は、資源ナショナリズムや資源企業の寡占化での世界的な業界の再編、多極化構造での新たなグローバル化への対応を考えること。
 メルコスール(南米南部共同市場)はベネズエラをメンバーに加え弱体化し、アメリカは、対中南米対策にIMFや世界銀行、FTAなどを通したソフトパワーを行使することも視野に入れるべきとした。
 同氏は、「私は決してこの地域がビジネスに適さないとは言ってません。ベネズエラで活躍している企業もあります。話に聞くイメージに引っ張られることなく、実像をみてください」と強調していた。