2007年2月28日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十七日】ルーラ大統領は二十六日、ウルグアイにヴァスケス大統領を訪ね、同国のメルコスル脱退阻止を取り付ける三カ条の合意文書を交わした。政府が最も懸念した隣国のメルコスル脱退は、ブラジルにとって国際外交の足場ともいうべき地域経済ブロックに隙間風が吹き、米国の通商戦略にかく乱される恐れがある。隣国は米国から数々の恩典を提供され、メルコスル脱退を条件とした両国間の自由貿易協定締結を控えていた。隣国の脱退断念の見返りに、ブラジルはウルグアイ産品の輸入と同国への投資促進、国境の橋梁架設などを公約した。
ブラジル・ウルグアイ首脳会談は、一週間後に控えたブッシュ米大統領の来訪に備えた泥縄式の布石といえる。ルーラ大統領の隣国訪問はわずか六時間のスピード日程であったが、同国のメルコスル脱退だけは辛うじて引き止め、米ウルグアイ自由貿易協定の締結は阻止したようだ。
ブラジルとウルグアイ両国は、ブッシュ米大統領を迎えそれぞれ通商取引は行うが、メルコスル通商協定の枠組みの中に限定されることになった。ブラジルが心配するのは、メルコスル加盟国が域外関税(TEC)で違反することだ。
ウルグアイ政府は二十六日夜、ルーラ大統領との合意内容を発表した。会談は実りのあるものとしながらも、ウルグアイの対ブラジル貿易赤字と貿易不均衡、弱小国扱い、陳情の軽視などを遠回しに批判したものであった。しかし、隣国の産業には生産力も技術力もなく、ブラジル市場への参入は今一つであった。
ルーラ大統領は、ウルグアイへの投資を促進する合意文書に署名。特にバイオ・エネルギー分野へのブラジル企業の進出が期待される。さらに両国の通商拡大に伴う大型橋梁が、ブラジル側のジャグアロン市とウルグアイ側のリオ・ブランコ市の間に建設される。
ブラジルはメルコスルで主導権を駆使する考えはないが、ブラジルの産業がダントツに発展し、地域経済の秩序保持という責任的立場を採ると表明した。対ウルグアイ貿易不均衡の是正は道義的責任であり、大国の憐れみではないという。
ウルグアイは米大統領を迎えてもメルコスル加盟国であることを忘れなければ、何を話してもよい。ブラジルは、伯米バイオ・エネルギー協定について話し合う。それはメルコスルに支障を来たさないはずであるとルーラ大統領はいう。
これまで冷たかったブラジルの対ウルグアイ外交は、米ウルグアイ自由貿易協定の締結が目前に迫ったことで、ようやく腰をあげたようだ。会談の会場となったヴァスケス大統領の農場は、ウルグアイ・アルゼンチンで係争中の製紙工場の近くにある。ブラジルは再々係争の仲裁を頼まれたが、言葉を濁した。
ルーラ大統領訪問の日、製紙工場ではフィンランドから輸入した大型機器の試運転が行われた。機器の始動とともに、隣国との紛争は音をたてて過熱化しそうだ。そこへ融資の土産を抱えたブッシュ米大統領も招く計画らしい。