2007年3月1日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二月二十八日】サンパウロ市証券取引所(Bovespa)は二月二十七日、中国上海発の金融パニックによるドミノ現象を受けて株価指数が六・六三%下落し、ニューヨークの三・二四%をはるかに上回った。市場関係者はまず、六年間続いた中国経済の一〇%台高度成長に陰りが見えたとする見解を示した。中国は世界経済の牽引車と期待されたことで、中国人民議会の動向が注目されている。次に中国のバブル経済は調整期に直面し、誰もがショックを懸念していた。上海証券取引所は二〇〇六年、株価指数を一三〇%も上げ過熱していた。第三に米国経済の弱体化も懸念された。
上海資本市場の九%暴落を震源地とする金融パニックは世界の証券取引所を襲い、サンパウロ市のBovespaは特に衝撃が大きかった。株価指数六・六三%の下落は、同時多発テロのあった〇一年九月十三日以来である。ドルは一・七三%上がり、ブラジル・リスクも一〇・五%上げた。
中国政府は過熱経済の調整と声明を発表した。同時に、不正取引や悪質投機の取り締まり強化も行うという。株価が全般に過大評価されたことは、誰の目にも明白であった。従って株価の下落が早期に回復するとは思えないと関係者は見ている。サンパウロ市証券市場の暴落は株価に留まらず、債券や通貨にも及んだ。
背中が痒かったら、妻がビンタを張れと古人はいった。ブラジルには、生活の知恵ともいうべき数々の格言がある。耳が熱かったら、世間の評判がよくない。手の甲が痒かったら財産を失うか、ビッグチャンスが訪れたのだという。
上海の株価指数一三〇%上昇は、投資家にとって手の甲が痒かったはずだ。同時に誰もが一三〇%はどの位の期間保つか疑問に思ったはず。その期間は二カ月であった。二十七日に突然訪れた招かざる客は、幸か不幸をもたらすのか分からない。
株価暴落は富士川の水鳥の羽ばたきのようなもの。実体がない。上海証券市場を駆け巡った噂は、中国政府が国家を食い潰す白アリの投機家を退治するというもの。中国政府が動いたのは、グリーンスパンFRB前議長がリセッション発言をした翌日であった。
ブラジルでも国際的な投機家グループの出没が問題になっている。ブラジルに上陸するとまず落とし穴を掘り、民間投資家がはまるのを待っている。中国政府は資本市場を健全化し、悪質な投機家や不正取引を排除するため実力行使に出たのだ。
昔の世界恐慌という化物とは違う。資本市場のマグニチュードは、電光石火に世界を一周する。ニューヨークの三・三%は、サンパウロ市の六・六%より強震とみてよい。多くの人が大損をしたことに変わりはない。唯ブラジルでは、中国の事情がよく分からないのだ。
中国政府が準備中なのか、準備済みなのか、それが何を意味するのか。ブラジルの感覚では、中国の現地事情を理解できない。中国や外国ではブラジルのようなあいまいさや杜撰さはない。中国経済は〇七年、一一%とはいわないが八%は伸びる。ブラジルの特産品、原材料や食糧、エタノールが、市況の乱高下にさらされることに変わりはない。