2007年3月7日付け
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙六日】ブッシュ米大統領は五日、ブラジル訪問の直前にベネズエラを封じ込める反チャベス法を制定し、ブラジルが計画する住宅ローン制度にも影響が及ぶことになった。同法は、中南米の八万五〇〇〇人に巡回治療を施す病院船の派遣や教師の研修、庶民向け住宅への融資などを盛り込んだもの。米大統領は八日の来伯に先立ち、ブラジルにとって不本意な対ベネズエラ問題を議題とする意向と思われる。ブラジル外務省は米大統領の配慮を前向きに捉えているが、外交専門家は、米外交の糊塗にブラジルを巻き込む魂胆を迷惑だとしている。
米国の故ケネディ大統領は一九六一年、キューバを封じ込めるため反カストロ法を制定した。米国は「進歩のための同盟」資金と称して、中南米地域の社会福祉や構造改革に必要な資金融資を行い、キューバの影響を阻止した。反チャベス法は、その第二弾ともいえそうだ。
チャベス大統領がオイルダラーと低所得層への社会福祉で既に手を打っている国々を標的に、米国が先回りをする計画らしい。反チャベス法は、病院船と教師研修、庶民向け住宅の三本柱からなり、どれもブラジルが関心を抱く低所得者向けの企画である。
法令の建前は、民主主義の擁護と自由貿易による貧困撲滅、社会正義のための闘争と謳っている。米大統領の駆け足外遊は八日、サンパウロ市から始まる。外遊は政治目的とされる。
病院船は一日二ドル以下で生活する世帯や医師の治療を受けたことがない母親を対象に巡回治療を行う。治療班は米軍の軍医で組織され、医療見習生が多数参加する。教師研修は米国で英語教師の資格を得、義務教育を終えていない児童を対象に活動をする。庶民向け住宅は特に、ブラジルなどが資金援助を受けて簡易住宅の建設を行うもの。
イタマラチは、ルーラ大統領の口癖「教育と医療、住宅、民主主義、社会正義」と米大統領の施政方針が一致するので、安堵している。伯米エタノール協定の締結を期待した者には、それに関する感触がこれまでない。ただグアルーリョスのエタノール精製所が、米大統領の視察日程に入っているので、示威行為にはなるとみている。
外交専門家らは、米大統領の訪伯が政治的な布石と見て、不快感を表している。中南米に反米勢力を生んだのは米外交の結果であって、ブラジルとは無関係である。病院船はキューバやベネズエラに対する当て付けであって、滑稽(こっけい)だという。米政府の宣伝活動は、外交政策での失政の尻拭いだとみている。
ブラジルが注意すべきことは、反米路線を採る国々との外交関係である。ブラジルは外債依存体質から脱却し、政治的に自由な国になる必要がある。
別の見方では、病院船が中南米の経済状態から見て時代遅れだという。国際通貨基金(IMF)や世銀を通じた米国の途上国支援は、各国に貧富の差を生んだ。そこへきて米国の社会福祉は、現地事情を無視した押し付けの善意であり、無益だとみている。