2007年3月7日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二月四日】ウインストン・チャーチル英首相が次世代を考えるとは、次回選挙や世論調査の結果を考えることだといった。少し見方を変えると、ルーラ大統領にも次世代構想が当てはまりそうだ。
ダヴォスの経済フォーラムで大統領は、社会保障院の累積赤字で悩む必要はないことを喝破(かっぱ)した。なぜなら同赤字は国庫庁の問題であって、社会保障院の問題ではないと大統領はいうのだ。結論からいうなら、社会保障院の改革は不要だといっているのだ。
多くの人が大統領と同じように考えているらしい。赤字をどこへ隠すかは、経理操作の問題という。経済成長を優先すれば、赤字はどこかで消化できると考えている。しかし、社会保障制度改革を含む構造改革なくして投資はない。投資なくして経済成長もない。
経済成長がなければ、赤字はどこへ隠しても病根となってブラジル経済を蝕む。掛け金を払わない老齢年金という弱者救済制度は、政治問題であって経済問題ではないと大統領はいう。それなら、弱者救済のためのインフラを構築するべきではないか。
当世代の年金を次世代が負担するというシステムは、少子化傾向と平均寿命の高齢化で先細りとなる。スウェーデンの社会保障制度を導入したブラジルは、行き詰まることが明白だ。同方式を導入した国々は全て、現状維持ができず社会問題になっている。
ブラジルの公務員が受け取る年金は国内総生産(GDP)の一三%に相当し、中国や南米の平均より遥かに多い。国際金融が一三%を心配しないわけがない。大統領の詭弁は、外国では通用しない。ブラジルの社会保障制度改革は真面目に取り組むべきだ。社会的弱者の老齢年金は、別に年金基金を設けるべきではないか。
社会フォーラムでは、社会保障制度の枠での老齢年金給付は困難という結論である。政治の当局者として老齢年金について次世代への対応を考えると、最低賃金の調整を含め資金源に関する年金制度の改革と法整備が必要である。