2007年3月9日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙八日】ロウセフ官房長官は七日、ブッシュ米大統領の訪伯により伯米関係が親密になっても、それがベネズエラのチャベス大統領と一線を隔すことを意味しないとする声明を発表した。ブラジルの外交方針は来る者を拒まないという。米大統領は七日、チャベス大統領の中央集権主義は国家に悲惨を招くだけと語った。それに対するブラジルの意思表示と思われる。ルーラ大統領が両国は協力することがたくさんあり、その一つがエタノールの生産奨励であると述べた。大統領所属の労働者党(PT)と関係する社会団体が、同協定に反対の意向を表明した。
ブッシュ米大統領の訪問がチャベス封じ込めなら、お門違いだと官房長官が明言した。また、米ベネズエラ間の仲介役を引き受ける意向もないことを表明した。米大統領発言は個人的見解とみなし、これから伯米両国が同一歩調をとるため、米市場でも両国のエタノール生産者を公平に扱うべきだと、ブラジルの要求を明らかにした。
サンパウロ市は同大統領の来訪に備え、舗道まで通行禁止とする物々しい警戒態勢を敷いた。空港も半径五キロメートル以内の航空を禁じ、事実上の離着陸制限となった。サンパウロ市民には二日間、不便を強いる。
伯米エタノール協定は、ベネズエラの石油戦略に備えた将来への伏線ともみられる。同時に中近東の石油への依存を縮小する狙いもある。チャベス大統領は米大統領に平行して亜国を始め南米諸国に訪問し、反米キャンペーンを繰り広げる考えのようだ。
ルーラ大統領は、米首脳が現実の同盟関係を結ぶためにブラジルを訪問するのは歴史上初めてのことであると感激した。ホワイト・ハウスは、伯米バイオ・エネルギー協定を両国の戦略同盟と位置づけした。ブラジルをエタノール基地として、本格的な資金投入を行うらしい。
政府は来る数年、同盟資金の流入が期待され、経済活性化法案(PAC)のインフラ整備やエネルギー確保が結実するとみている。米大統領の訪問を機に伯米蜜月時代を演出し、PT党内の反米派を封じ込める作戦もある。首脳会談ではベネズエラがタブーであり、絶好のチャンスを棒に振る愚は避けたいと大統領側近は一様に考えている。
これでブラジルは、名実ともに南米のリーダーになれそうだ。ルーラ大統領が闘牛士なら、チャベス大統領は牛。これまでチャベス大統領はルーラ大統領に横柄な態度で接したが、これからは訳が違う。ルーラ大統領は三月三十一日にキャンプ・デーヴィットに招かれ、「世界のルーラ」に奉られる。
伯米協定の調印は受精卵のようなもの。これからは、流産しないように気をつけねばならない。ブラジル産エタノールは、CIF価格でガロン当たり〇・五四ドル。米国産エタノールより格安なので、米国市場参入には摩擦を避けるよう米国の生産者に配慮する必要がある。