2007年3月10日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙九日】ブッシュ米大統領は八日夜、サンパウロ国際空港へ到着し、秒単位の旅程が始まった。伯米首脳会談に期待を寄せるルーラ大統領は、欧米の農業補助金制度をテロの元凶だとして善処を求める一方、フルラン産業開発相は訪伯を伯米関係の新局面とみている。ロンデオー鉱動相は、エタノールを標準化とコモディテイ化で国際商品とする米案に夢を膨らませている。更に米大統領はアフリカ諸国の民主化で、ブラジルの協力を求めるらしい。ルーラ大統領が、貧困撲滅とテロ対策の決め手は無障壁の市場開放だとし、脆弱な民主政治への対策で抱負を述べた。
米大統領の訪伯を機に、金相場が高騰した。エタノールには伯米双方の思惑が絡む中、水面下は次の舞台に向けた準備で緊迫した動きがあるようだ。しかし、最大の焦点はエタノールが原油並みに扱われて世界を自由に飛び回り、ブラジルがエタノールの産油国になることらしい。
国際機関の見方によると、米大統領の訪伯は、ルーラ大統領をラテン・アメリカのリーダーとして位置付けしたことを意味するようだ。一方ブッシュ米大統領に対する評価は最悪で、パウリスタ大通リでは警備の軍警とデモ隊が衝突し、負傷者多数を出した。
伯米大統領は、特にアフリカ諸国の民主化で両国が共同作戦を展開する合意書に調印する。双方の間にはチャベス大統領が糸を操るボリビア問題や世界貿易機関(WTO)の係争問題があるが、両国の外交関係は諸問題を超えた戦略同盟らしい。
アフリカのギニア・ビサウなどの諸国は独立以来、クーデターと暴動を繰り返している。ここへ米政府の軍事費でブラジルの平和部隊が、ブラジルの選挙システムを持ち込むらしい。正常化後はブラジルが音頭を採る途上国同盟の一員となり、産業開発にまい進する。エタノール大国ブラジルは、アフリカや中南米で技術指導に当たる。
アフリカ諸国連合からもブラジル政府へ、正式に民主化と産業開発の指導要請があった。政府は民主化指導の対象を、チャベス大統領の手前を慮り中南米以外と希望した。ベネズエラと意を同じくするボリビア、エクアドル、キューバ共同体への刺激を避けたいと考えている。
ルーラ大統領は米大統領の来訪前日、ドイツのケーラー大統領をプラナウト宮に迎え、中近東を震撼させるテロ活動について意見交換をした。米国の難問テロの解決は、貧困の撲滅と生活の安定に帰結した。
またWTOのドーハ会議では、農業補助金の削減へドイツの協力を求めた。ドーハ会議が決裂するなら途上国の貧困撲滅は困難だし、米国のテロ防止など遠く及ばないとルーラ大統領は述べた。貧困を招くのはチャベス大統領の中央集権政策か、米国の農業補助金か意見が別れた。
ブッシュ米大統領の警備で、サリンのような毒ガスによる襲撃の可能性があるとして、ゴイアス州の化学生物兵器部隊が出動した。そのような物騒な情報は、幸いに入らなかった。同特殊部隊は、ロシア製地対空小型ミサイルを襲撃に備え、米大統領の巡回全行程へ密かに配置した。