2007年3月10日付け
「近ごろ、姿が見えないじゃないの」といわれていた花柳寿り翔さんが、去る二月十七日、東京の国立大劇場の舞台に立ち、清元「流星」を舞っていた。その舞台は、花柳壽輔・舞踊道場主催の第五十三回「寿会」。外国在住者が舞台に立てるのは稀で、名誉だった。
サンパウロの自宅に来た便りによれば、寿り翔さんは、今回、「流星」のために、壽輔師匠が特注した四つの面をプレゼントしてもらった。感激した。四人の人物を表現できるだろうか、と戸惑いがあったが、懸命に稽古に取り組んだ。踊り終えて、師匠から「(ブラジルにいるので)日ごろの稽古が少ない中で、よく長い踊りをおぼえました。上手に踊りました」と褒められた。客席ではブラジルで同じ舞台に立ったことがある詩吟や民謡、太鼓の演奏者や知己、さらに寿り翔さんの教え子らがみており、再会に胸が熱くなった。
現在、東京世田谷に滞在しており、師匠から「これもおぼえておきなさい。これもやっておきなさい」と、とすすめられているので、滞在が長引きそうだという。
寿り翔さんは、生後三カ月で渡伯、三歳から日本舞踊を習い始め、十三歳でブラジルの師匠から名取を許された。その後、日本での修業を志し猛勉強、花柳壽輔直弟子師範となった。
学業は、サンパウロ・カトリック大学の大学院修士課程(数学専攻)で学んでいる。英語はアメリカンスクール・エスコーラ・アングロ・ブラジレイラを卒業、絵画もパンアメリカーノで学び、今も自分なりの絵を楽しんでいる。