2007年3月13日付け
ジョゼ・セーラサンパウロ州知事出席のもと、サンパウロ州政府は五日、サントス市内のサンパウロ州上下水道公社(SABESP)の事務所敷地内で、「サンパウロ州沿岸部衛生改善事業」の契約調印式典をおこなった。この事業は人口百六十万人を抱えるバイシャーダ・サンチスタ地域の下水道普及率を、現在の五三%から九五%にあげ、新たに十二万世帯の生活廃水の処理を可能にするもの。観光シーズンに訪れる約百三十万人の観光客にも恩恵が期待される。総事業費は十二億三千六百十万レアル(約六百七十五億九千五百万円)で、そのうち三億八千九百九十万レアル(約二百十三億二千万円)の円借款契約となっている。長年の環境汚染に悩んできた観光地域だけに、調印式には地元メディアも取材に大勢かけつけ、関心の高さをうかがわせた。
午後一時半過ぎに始まった式典で挨拶にたったセーラ州知事は熱のこもった口調で、「環境がよくなればリゾート地であるこの地域の観光客も増える。また雇用の機会も増えるだろう」と述べ、地域経済の活性化への効果に大きな期待感を示した。
同公社がまとめた資料によれば、同事業により四千人規模の雇用増大を見込めるほか、下水を介した感染病の減少、幼児死亡率の低下などが期待される。
日本側代表であいさつした島内憲大使は、〇四年、〇五年と両国首脳が相互訪問した経緯にふれ、両国の協力関係がこれまで以上に親密化していると指摘。その上で「今日の式典は来年にせまった日本移民百周年のプレイベントでもある」と強調した。
また二人に先立ち祝辞を述べたサントス市のジョアン・パウロ・タヴァレス市長は、日本側の代表に感謝の意を表すとともに、「公衆衛生の改善は地元住民の生活向上に直接つながるもの」と称えた。
同事業は、汚水の垂れ流しによる水質汚染が深刻なサンパウロ州沿岸部の観光地、サントス、ベルチオーガ、グアルジャー、クバトン、プライア・グランデ、サンヴィセンテ、モンガグア、イタニャエン、ペルイーベの九市、都市部に下水道施設や水質管理に不可欠な環境監視システムなどを整備し、住民の生活基盤向上をはかることを目的としている。
JBIC(国際協力銀行、篠沢恭介総裁)は〇四年、二百十三億二千万円を限度とする円借款契約を同公社と調印している。今回の式典は施工会社の選定がおわり、建設日程が具体化したことを受けて開催された。
工事期間は今年五月ごろから二〇一一年五月までを予定。総延長距離千百七十五キロメートルの下水管網、七つの下水処理施設、百一の汲み上げポンプなどが各市で設置されるほか、浄化した下水を海底から沖合に排水する「海中放流管」がとりつけられる。
JBICにとっては、サンパウロ州内ではサンパウロ市チエテ川流域環境改善事業(四百九十四億円)に続く大型借款となる。
式典にはジェスネル・オリベイラ同公社代表、同地域の各市長らほか、日本側から西林万寿夫在聖総領事、JBICリオ駐在員の尾頭寛氏らが列席した。