2007年3月14日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】コスタ通信相は十二日、国営テレビ企画書の原案をルーラ大統領に提出したことを明らかにした。国営テレビは二億五〇〇〇万レアルを投じ、十二月から行政府が実施する数々の政策方針や地方自治体の広報とデジタル放送のコマーシャルを同時進行で行う。通信相の考えでは、国営テレビを国営ラジオ放送のネットワークに併設、全国規模のチャンネルとし、同時放送にする予定。この国営テレビは大統領の個人的発案で、二十四時間フルタイムの「ブラジルの声」テレビ版。国民との直接対話の機会を設けるのが目的とされる。
国営ラジオ放送局にもテレビ放送局はあるが、全国の主要都市の三〇%でしか受信されない。これを三年計画で一億五〇〇〇万レアルを投じて津々浦々、小都市でも受信できるようにする。一億レアルでテレビ局の機器を購入する。
国営テレビの開設は、デジタル放送の規格制定法案に盛り込まれていた。行政ニュースや政府優先法案の説明の他に、既存の文化や教育、社会福祉などの放送も内容充実化を図る。すでに新チャンネル六〇から六九の一〇局も、開設許可を申請している。
通信省は新チャンネルの利用を各省庁の必要に応じて提供するが、放送内容が行政ニュースに値するものか大統領府事務局の検閲を受ける。国営テレビ局もう一つの目的は、デジタル時代の道備えもある。
国営テレビの機器は、時代遅れのアナログ機器で始めるが、十年以内にデジタルへ交換する。しかし、国営テレビは予算もないし時間的にも待てない。国営ラジオもこれまでの一方通行から、国民参加型のラジオ局に生まれかわる。同案にはラジオ関係者が業界の活性化と新しい息吹を期待している。
デジタル放送の導入と国営テレビ局を同時進行する計画は、マスメディアを通じた民主化運動の一環とされる。国民の意思統一は、民主主義のもとでは時間がかかるので、マスメディアを使うという試みだ。またデジタルの導入と同時に放送局の営業許可にも、厳格な規格を求める。
デジタル放送システムが国内で始動すると、デジタル法の取り締まり機能に限度があり、デジタル無法地帯が発生しかねない。官房室が国営テレビの企画とデジタル放送の法整備を検討している。デジタル放送には分からない部分も多く、スタッフは苦労している。
ブラジルの民主化は労働者党(PT)、特にルーラ大統領の看板であるが、党が民主化とマスコミ改革を第二次政権の目標にした。国民の足並みが揃わず、景気の低迷で民主化が裏目に出ているからだ。またメディアに寡占化傾向があり、裏金疑惑でPTがマスコミに操られたとみている。
メディアの寡占化に対抗するテレビ局の所有は、PTの悲願であった。しかし、国営テレビはPTのテレビ局ではなく、独立した公営機関である。モデルとしてはBBC放送をまねるらしい。マスコミが政治家を断罪し、また組閣するのを避けたいという考えだ。