2007年3月14日付け
「五年がかりでやっとここまでこぎつけました」―。中小規模の農家の発展を目的として、JATAK(全国拓植農業協同組合連合会)により〇二年に建設された「農業技術普及交流センター」の開所式が十日、サンパウロ州グァタパラ市にある同センター内で開催され、所長の塩谷哲夫さん(東京農工大学名誉教授)はあいさつの言葉を感慨深くこう述べた。構想十五年、建物完成から五年、紆余曲折の歳月をへて、このほどバイリンガルの若い人材を中心に運営組織を整えた同交流センター。この日の式典にはブラジル農協婦人部連合会(ADESC)の会員や地元関係者など約五十人が駆けつけ、センターの新たな門出を祝福した。
同センターは農水省の国際農業交流促進特別対策事業のひとつとして、〇一年に設立された。建設にあたり同省から三千二百万円の援助を受けた。
式典であいさつにたった塩谷所長は、同センターを「小粒だが山椒のようにピリリと辛い存在に」と表現。そのうえでセンターが目指す農業技術を〃和魂伯適〃と強調し、日本伝統の集約管理農業をもとに持続的で高付加価値のある作物をつくる技術を普及したいと意気込みを語った。
続いて同省の藤田裕一課長補佐は、グァタパラ周辺が笠戸丸移民の入植した移住地として称えたうえで、「センターは決して大きなものではないが、南米各地で活躍する農家を結ぶ結節点を担って欲しい」と大きな期待感を表した。
地元文協を代表して川上淳会長も「センターがコロニアのパートナーとなって、グァタパラを情報・文化の発信地にするよう発展してほしい」と語った。
センター完成から五年後に開所式になったことについて、塩谷所長は「さまざまな場面で、お互いに良かれと思ってやろうとしていることなのに、日本サイドとブラジルサイドの思いのすれ違いがあったりして、紆余曲折の多い道を歩むことになってしまいました」と、五年間にあった人事や資金問題、地元団体との軋轢などについて説明した。
前任者の辞表をうけて〇三年、塩谷さんが二代目所長に就任した。これまでに日ポ語に堪能で、農業経験が豊かな職員六人を揃えるなどして運営体制を強化し、このほどの開所式に臨んだ。
今年度からは同省の「国際農業連携活性化特別対策事業」として、センターを起点に、現地の試験研究機関・大学・農協との共同研究にとりくむほか、専門研修の機会や農業情報のデータベース化を進めるという。
式では、同センター設立に尽力した故・木元敏明氏(ボツカツ大学元教授)を称えた講堂の除幕式がなされたほか、センター設立の協力者であるポンペイア市の西村農工学校代表、西村俊治氏ら五人に対して、感謝状と記念品がおくられた。
式典にはグァタパラ市のエスドラス・イギノ・ダ・シルバ市長や田畑篤史在聖副領事、野末雅彦JICAサンパウロ支所次長らが列席した。
式典後には地元文協の歓迎会がおこなわれ、二百人以上が参加。青年部により太鼓が披露され、大きな盛り上がりを見せた。
JATAKは農水省の外郭団体として、農業移住者の援護などを目的に一九五六年に日本に設立された。六六年にサンパウロ州グァタパラ市にブラジル農業拓植青年訓練所(現・交流センター)を設置し、農業青年の自立援助に貢献。九〇年代からは事業目的を農業交流促進に転換し、地域農業者や地域農業団体の支援に取り組んでいる。