2007年3月17日付け
□いつまでも輝き続けるブラジルの星(1)
この辺で、少しアマゾンの話題から離れてみたいと思う。
ブラジル在住者であれば、十三年前当時の記憶が戻ってくるかもしれない、そんな記事である。
一九九四年五月。
読者のみなさんもご存知のように〔F1〕(〃フォーミュラー・ワン〃と呼ばれる世界最大の自動車レース)の星、アイルトン・セナ(本名アイルトン・セナ・ダ・シルバ)がイタリアのイモラ・サーキットの壁に激突して天に召されてしまった。
レースをテレビ観戦していて、事故の映像があったその瞬間から、葬儀が終わるまでのブラジルの様子だ。
ブラジルでは、サッカーを見ても分かるとおり、入れ揚げたらあれだけ熱狂する国民であるため、セナの死、それを嘆き悲む場合も尋常ではない、というような状況になった。
セナの死亡が確認された午後三時四十分、大統領が全国に臨時特別放送をして[今日からセナの葬儀が終わるまでの三日間、政府機関全てが喪に服すること]を発表した。
そして、政府関係の全ての建物に半旗が掲げられ、翌日の月曜日はサンパウロの町は死んだような静けさに包まれた。
事故現場イタリア・イモラの法律事務の関係から、遺体の搬送が遅れ、結局火曜日の朝六時にサンパウロのグァルーリョス国際空港に到着する、ということになった。
その日は、サンパウロ市もサンパウロ州も機能停止、全ての公立学校までが休校になった。これは恐らくサンパウロだけでなく、ブラジル全域だったろうと思う。
当日火曜日は、午前五時から昼まで八局あるテレビ放送が、全て一コマのコマーシャルを流すことなく、セナを乗せた飛行機が空港に到着する前から、葬儀場となったイビラプエラ公園内にある州議会議事堂に安置されるまで、絶えることなく実況中継が続けられたのだ。日本では、このような時でもNHK以外では、しっかりコマーシャルを挟んでの実況となるだろう、と思ったり、民放では別の報道などをすると思う。
七時間あまり、どの局を回しても、コマーシャルが入っているのを見付けられなかったのはサスガだった。こういうのも特徴的なブラジル文化と言えるのかもしれない。
棺が州議会議事堂に到着してから、三十分間〔家族とフィアンセ以外誰も入場させない〕という親族との別れの時間がとられた。昼からは一般の人達との最後の面会ミサが始められた。普通の葬儀のベロリオでは、棺の顔の部分に付けられた窓越しに、故人との最後の面会となるのだが、セナの場合は、事故死ということから、その窓が設けられなかったようだ。
最初一番の一般参列者は、サンタ・カタリーナ州の町からやって来た人で、月曜日の朝一番から徹夜で並んでいたそうだ。
葬儀の行われたイビラプエラ公園は、筆者の家からも車で二十分くらいの所なので、筆者も出来ることなら参列しようと考え、時間を考えて火曜午後七時頃に公園に着いたのだが、葬儀場の州議会ビルまでの葬列は大きく、三列に分かれており、それぞれの列が五キロ以上の長さに達しているそうで、改めて彼の民衆への人気を再認識させられた。
その葬列の横で警備している警官も目が腫れていたりした。なにしろテレビでセナの死亡ニュースを解説していた女性アナウンサーまでが、突然泣き出して、ニュースが中断される場面がかなりの局で起こった。日本では考えられないことだ。
そんな葬列に、勇気を出して並んだ私は、どうなったか、というと――。
イライラしながら深夜午前二時まで延々と七時間も並んでいた。それだけ待っても州議会の建物すら見える場所に届かず、根気が失せてしまって、諦めて列を出てしまった。列を作るのが大好きなブラジル国民には到底ついてゆけなかったのだ。
そして遺体の安置してある参列の列が延々と続いている州議事堂の正面に回り、警官隊がスクラムを組んで、列の割り込みを阻止している場所まで行って、遠くに見える遺体安置所に向かって手を合わせて帰って来た。
これでもれっきとした葬列者だと自分では納得している。つづく (松栄孝)
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