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イピランガ石油を買収=ペトロブラス=予想価格15億ドル=インサイダー取引の疑いも=市場シェア、50%へ

2007年3月20日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】ペトロブラスとブラスケン、ウルトラ・グループの企業連合は十八日、燃油配給や石油化学の大手、イピランガ石油の買収を明らかにした。買収交渉はペトロブラス経営評議会で十六日、大筋で合意し、十九日に正式発表とした。買収価格は市場予測によれば一五億ドルとみられ、業界では少なからぬ波紋が広がった。公式発表に先立ち有価証券取引委員会(CVM)は、イピランガ石油に対し、有利な株価で取引を行った経緯について説明を求めた。同社は一九三七年、リオ・グランデ・ド・スル州で設立され、現在は全国規模の燃油配給と石油関連事業に営業分野を広げていた。
 イピランガ石油は買収後、燃油配給をペトロブラスとウルトラ・グループへ統合、石油化学がペトロキーザとブラスケンへ統合される。イピランガ石油の二〇〇六年度売上げは二一六億レアル、営業益は五億三三八〇万レアル。同社は五家族と小株主多数による同族会社であった。
 イピランガ石油は、ペトロブラスに次ぐ国内第二位の燃油配給会社であった。全国に五〇〇〇カ所のガソリンスタンドを所有。統合後はペトロブラスの市場シェアが、三二%から五〇%へ増え、公正取引委員会(Cade)の目にも留まりそうだ。買収交渉の締結を認めたペトロブラス経営評議会には、財務相や官房長官、鉱動相も委員として名を連ねている。
 問題はイピランガ石油株が十六日に急騰したことだ。買収交渉の具体化が原因と思われるが、急騰の前日に買収交渉成立の情報が漏洩したのだ。サンパウロ市証券取引所の株価指数は一・二七%低下したのに、イピランガ株は三・五七%も上げた。同社はしばらく経営難にあった。それが最近、不思議に立ち直ったらしい。
 イピランガ石油の買収には、スペインのRepsolも参加した。他に食指を動かしていたのは、イタリアのAgipやフランスのTotalFina、英国のブリティッシュ・ペトロレアム、米国のエクソン・モビルもいた。どれも買収価格で、折り合いがつかなかったようだ。
 CVMのトリンダーデ委員長は、イピランガ石油が標準価格を上回る有利な条件で持ち株を売却した背景について説明を求めた。CVMはさらに、サンパウロ市証券取引所に対し、誰がイピランガ株の急騰に関わったか調査を命じた。金融市場で普通取引きされるのは全株の一部分に過ぎないのに、当日は大量に、しかも三・五七%の上乗せで不自然な取引が行われたからだ。
 誰かが事前に情報を漏洩させたインサイダー取引の形跡は明白である。同様のインサイダー取引は、サジアのペルジゴン買収でも起き米国CVMから告発された。しかし、ブラジルの当局は、捜査中として結果を明らかにしていない。
 イピランガ石油を買収した企業連合は、わずかな資金で同社の閉業と買収手続きを行うと市場関係者はみている。企業連合各社の株が十六日、大量に取引された。同企業連合の系列は、どこもイピランガ石油買収のために経常費の高騰を余儀なくされそうだ。