2007年3月21日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙二月二十日】人類は十八世紀まで、船の航行に風力か奴隷の体力を使い、料理には薪を焚いていた。石油や石炭を使い始めたのは、つい最近のことだとジョゼ・ゴウデンベルグ元USP学長がいう。
人類の石油・石炭消費量が激増し、埋蔵量の半分を瞬く間に使い果たした。しかも石油・石炭は、温室効果というオマケがつく。化石燃料は消費燃料の八〇%を占めるが、これを二〇%に押さえることが環境汚染の解決策と元学長はいう。
エタノールは、解決策の一つといえる。一リットルのエタノール生産に使われる化石燃料は一〇分の一リットル。それだから再生可能なエネルギーと呼ぶ。米国ではトウモロコシを使うが、一リットルのエタノール生産に一リットルの化石燃料を使うので、再生可能とはいえない。
その点、ブラジルのエタノールは将来性がある。アルコール計画の成功に意を強くした政府は、ディーゼル油の代替品に油脂植物の栽培を生活扶助制度と合わせて小農へ奨励した。アイデアはよいが、前途は多難。植物油に付随するロジスチックが難問だ。
多数の小農の間を巡り、油脂原料を集めて搾油工場へ運ぶのは並大抵ではない。デンデやヒマに比較したら、大豆は歩留まりが低いから賢明な策とはいい難いが、油脂原料として大豆のほうが、大規模に機械化されているため小農起用より現実的といえる。
バイオディーゼルの取引価格は現在、リットル当たり一・七二レアル。ディーゼルオイルの税引き価格は、一・三四レアル。エタノールも当初は高価だったが増産ともに廉価となったのだから、バイオディーゼルも、技術の向上とともに割安になると思われる。
欧米ではバイオディーゼル価格が、ディーゼルオイルの倍である。差額を補助金で補っているが、いつまで国家財政が持ちこたえるかが問題といえる。ブラジルではディーゼルオイルの二%に留め、エンジンと栽培で使う農薬や化学薬品の影響を現在調べている。
アルコール計画のようにバイオディーゼル計画も成功するなら、大豆油の起用一辺倒は避けたほうがよい。大豆生産は、アマゾン熱帯雨林の伐採につながるので再生可能ではなくなる。また食用大豆と有毒物質を含む燃料用大豆の区別も必要。米国では、食用トウモロコシと燃料用トウモロコシの区別で深刻な問題が起きている。
北東部地方の小農に奨励するのは、デンデやヒマがよい。これら生産物は、バイオディーゼル用よりも高価に売れるチャンスがあるからだ。政府の補助金が受け取れる他に、安定した職と手間を確保できる。ブラジルのバイオディーゼル計画は初歩の段階であり、改良の余地は多分にある。