2007年3月31日付け
JICA(国際協力機構)ブラジル事務所(小林正博所長)は二十九日、大サンパウロ圏の約一三%の水を供給するビリングス湖の水質改善計画に関する調査書をサンベルナルド・ド・カンポ市に提出した。同調査は同市の依頼を受けてJICAが〇五年三月から二カ年かけて実施したもの。調査書には下水道の設置や同地域の浄水場の修復、環境教育センターの設立など、八つの環境改善事業が盛り込まれている。総事業費は約二億一千八百万レアル(約百二十六億円)の見込みで、同市はブラジル政府関係機関の承認を得た後、JBIC(国際協力銀行)にほぼ全額となる円借款契約を申請する見通しだ。同日、同市の庁舎で開かれた調書の贈呈式には日本をはじめ多数のメディアが駆けつけ、関心の高さを伺わせた。
同事業は同湖周辺を吸水性の高い道路にする舗装工事、同市アルヴァレンガ地区(二十五ヘクタール)内のごみ埋立て地の環境改善、水草を使った長期的な湖の浄化装置、地域内の下水処理場の改修、地域や観光客向けの環境教育センターの設置、自然公園の設置などを予定している。
ビリングス湖はチエテ河の最上流部に位置し一九三七年、発電を目的として造られた。七〇年代から近隣地域の人口が急激に増加したことに加え、九二年までは汚染がひどいチエテ河の水が同湖に逆送されるなど、水質の悪化が深刻化していた。
式ではまず同市市役所の企画・情報技術局の南洋行局長が事業内容を説明。南局長は同市が〃ビバ・ビーダ、ビバ・ビリングス〃をスローガンとして、同事業の推進を進めてきたと述べ、同湖の水質改善が地域経済の長期的な発展につながると強調。その上で事業費をJBICに円借款を申請して工面したいと述べた。
これを受けて尾頭寛JBICリオ駐在員は「(同市から)正式な円借款の要請を受けたら、日本側に事業が推進できるように働きかけたい」と述べ、同事業に前向きな姿勢を明らかにした。また来年の「日伯交流年」と「日本移民百周年」に触れて、「節目の年にあわせて円借款を結ぶ方向になるのでは」とコメントした。
このほか西林万寿夫在聖総領事とウイリアム・ジブ同市市長は、同事業が来年にかけて具体化できれば「日伯交流そして日本移民百周年のシンボル的な事業になる」と同事業の意義を強調した。
同事業は〇九年から一五年にかけて実施を予定。南局長は報告の中で、事業費の内訳として五千七百七十九万レアルが同市、同公社が一億六千百三万六千レアルと示されたが、ほぼ全額がJBICに円借款を申し込む計画になっている。
同市は今月十二日に二百十八万レアルの事業予算(見込み)に調印済みで、来月十一日までに企画省の関連機関、COFIEX(外国投資委員会)との間で議定書を結び、その後JBICへ円借款契約を申請する予定だ。
南局長によれば、順調に行けば来年中に同銀行と円借款契約を締結し、〇九年に事業を着工、二〇一五年ごろに事業は完了するという。