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「親しみ感じない」3割も=外務省が対伯世論調査=今後の2国間のあり方探る=国外犯処罰報道が影響か

2007年4月10日付け

 移民百周年を翌年に控えて二国間のあり方をさぐる材料にするため、日本国外務省は調査会社に委託して今年二月、日本全国の成人男女二千人に対して「日伯関係に関する意識調査」を行った。「より一層関係を良くするべきである」が45%を占め、相互理解を促進すべき分野として「文化」「スポーツ」「経済」などが挙げられた一方、昨年末以来の集中砲火のごとき国外犯処罰(代理処罰)関連報道を反映してか、「親しみを感じない」が三割を占めるなど、来年に向けての課題も残した。
 約三十万人もいる在日ブラジル人たち、いわゆるデカセギの日本社会発展への貢献度に関しては「貢献している」が35%を占め、「貢献していない」の10%に比較して圧倒的な高評価を得た。
 ブラジルに対するイメージや情報の入手元では「最近のテレビ・新聞などのニュースやその他の番組を通じて」が74%を占めた。調査が実施された二月九~十二日は、桧垣ミルトン・ノボル被告に関する初の国外犯処罰(代理処罰)裁判となった二月六日の直後だった。
 日本国内では大手メディアが連日、トップニュースで報じていた時期だっただけに「テレビ・新聞などのニュース」でブラジル情報を得たと認識する人が多かったようだ。同ニュースの文脈だけでみれば「ブラジル人=犯罪者」的な扱いが中心であり、その印象を強くした視聴者がいたとしても不思議はない。
 それを反映してか、ブラジルやブラジル人に対する親しみの有無を問う項目に関しては、「親しみを感じる」が23%だったにも関わらず、「親しみを感じない」が28%にもなった。一番多かったのが「特に何も感じない」の41%で、その中には良否つけがたい心情の人も多くいた可能性も推測される。
 ところが、日伯の両国関係に関しては「良好だと思う」が30%を占め、「良好だと思わない」は12%にすぎなかった。日本が外交政策を展開する上で、ブラジルとのパートナーシップは有益だと思うかとの問いに関しても「有益である」が50%、「有益でない」が19%だった。
 つまり、ブラジル人には「親しみは感じない」が、ブラジルとの関係は「良好」で「有益」という、一見ちぐはぐな状態になっており、日本国内のブラジル人犯罪者報道の集中砲火による影響を伺わせる結果となった。
 「移民百周年や日伯交流年の交流事業によって相互理解を促進させるのに特に有益な分野は」との問いには、文化26%、スポーツ24%、経済21%、人物交流13%だった。「ブラジルとの関係で強化すると良い分野」には49%が「学術・文化・スポーツ交流」、35%が「資源開発・エネルギー」をあげた。
 今後の日伯関係に関しては「より一層関係を良くするべきである」との積極的改善派が45%だったが、「現状で十分良好である」との現状維持派も32%、「関係を良くする努力をする必要はない」との否定派も5%あり、必ずしも積極的な世論ばかりではない。
 今回の調査は、日本全国の二十歳以上の男女二千人に個別聴取し、うち千三百二十五人から有効回答をえた。日本における対伯世論調査は「データがない。少なくともこの十年はない」(在聖総領事館)というめずらしいもの。
 ブラジルにおける対日世論調査は一九八九年、九九年にも行われた。百周年をにらみ今年は再度、対日調査も計画中だという。
 デカセギは工場では貢献してくれて有り難いが外国人犯罪はもうたくさん――との世論からは、節目の年にも関わらず、二国間関係の方向性に迷いが生まれている状況が伺えるようだ。