ホーム | 日系社会ニュース | 日本語センター〃お願い〃の文書=緒方JICA理事長へ=「南米継承日本語教育課」を=JICA内に新設して下さい=「日本の理解者」を育てる=教師の本邦研修は最重要

日本語センター〃お願い〃の文書=緒方JICA理事長へ=「南米継承日本語教育課」を=JICA内に新設して下さい=「日本の理解者」を育てる=教師の本邦研修は最重要

2007年4月21日付け

 国益に関する大切な事業として、大きなビジョンで「南米継承日本語教育課」の新設をお願いする――。ブラジル日本語センター(谷広海理事長)は、今年一月から行ってきた、JICA日本語教師研修(本邦研修)の廃止を含めた見直しに対する反対の署名活動をさらに発展させ、JICA内に「日本語教育課」を新設するための研究調査を申請することを決めた。そのための申請書は、これまでに同センターに寄せられた三千五百二十三人の署名や嘆願書とともに、二十二日に来伯する緒方貞子(独立行政法人)国際協力機構(JICA)理事長に手渡される。
 「移住者支援で始まった日本語教育は成長発展し、新たな時代を迎えている」と、〃お願い〃の文書は日本語教育の重要性を訴える。
 二万人といわれるブラジルの日本語学習者に非日系や成人が増える一方で、千人といわれる日本語教師の半数は移住者であり、年齢、薄給の待遇、農村地帯での生徒減少などをうけ、教壇を去っている。それを高学歴の二世、三世の教師が補い、ポルトガル語を併用しての独自の継承日本語教育を発展させてきた。
 また、「日本就労者(いわゆるデカセギ)の一部が引き起こす様々の問題、犯罪などの原因は日本語ができないことにある」と、昨今日本でも大きく取り上げられ、社会的な問題となっているデカセギが抱える問題を提示し、「南米日系人の日本語教育は同時に日本国の問題でもあるのです」と、日本とのつながりを強調。「南米継承日本語教育課」を新設するための研究調査の実施を訴えた。
 谷理事長は「〃移住者を維持する〃ためという視点だけでなく考えてもらいたい。日本へ行くことを思って勉強している人がいる。日本への親しみを作っているという継承日本語の新しい息吹を見てほしい」。
 同センターの丹羽義和事務局長は「日本への憧れを持った生徒らは、結局〃日本〃というところへ戻る。日本語教育は、日本好きを育てるという国策なんだ」と力強く話した。
 また、同文書は「日本語教師は単に日本語を教えるだけでなく、日本文化の紹介、伝達者であり、日本での実習、体験こそが重要(抜粋)」と本邦研究の意義も訴える。
 研修事業見直しを含む案は、昨年十一月に法務省内の委員会から提出され、十二月に内閣府行政改革本部の承認を受けている。センターでは署名活動をはじめ、全ブラジルまた、アルゼンチンやペルー、ボリビアなど南米諸国に輪を広げ、これまでに約三千五百二十三人の署名と研修の重要性を訴える嘆願書を集めた。
 そのうちの一つは、日本語学習者に対する意識調査を引用し、「学習者二万人のうち、三分の一が成人であり、三分の一に訪日経験(観光四七%、仕事三三%、留学研修一六%)がある」「半数以上が日本文化に触れたいと教室に来る」ことを示した上で、「どのように言葉を尽くしても、日本の匂い、その言葉が使われる場の雰囲気、感触はブラジルに住んでいては体得できない」。「日本への敬愛の念を抱いた日系ブラジル人は日本の国際化の先兵となる資質を備えている」と訴えている。
 七九年から始まり、これまでに三百七十六人を日本に送り出してきた同研修制度。多くの嘆願書は、「研修を広い意味での国際交流として捉えれば、これほど成果の上がる事業はほかに類を見ない」と、廃止に対し反対を述べている。