2007年4月25日付け
【ヴェージャ誌二〇〇三号】新しく法相に就任したタルソ・ジェンロ氏は、ブラジルの民主革命が目指すユートピアとは、社会疎外者をなくし全国民が社会参加することだという。現在六十歳、リオ・グランデ・ド・スル州サンボルジャ市出身。裏金疑惑で崩壊前夜の労働者党(PT)で党首を努め、一連のスキャンダルを葬った。PTの長老らが去ったあと、ルーラ大統領のご意見番として政権の舵をとることになった。同氏にとってブラジルとは、PTが考えているより偉大なものだという。同氏は今、第三次ルーラ政権の構想を立案中である。
以下は同法相がブラジルの民主主義に描く抱負だ。
【連邦警察とPT】PTによる連警の政治警察化が噂されているが、連邦令により連警のプロ化が位置付けされており、PTへ有利に計らう調書の操作や政治活動への利用はない。全ての党に連警を道具化する考え方はある。それは、あくまでも非常手段であることをわきまえるべきである。
【言論の自由とPT】言論の自由だといってPT批判をする。しかし、的を射たものと単なる中傷したものとある。PTのイデオロギーは階級闘争が根底にあるので、社会階層に対する見方が一面的なところがある。しかし、一方的で独善的なものではない。
PT党員の中には、迫害や拷問などを受けて人生を破壊されたり、思想的に屈折した者もいる。だからといって、加害者に復讐するチャンスはない。恨みを晴らす場としてPTを選んだ者は去らざるを得ないだろう。PTの伝統的ビジョンは貧乏人の味方であり、自己主張は影を消す。
【大統領再々選と私の考え】大統領再選論で、私は誤解されている。カルドーゾ元大統領の一九九九年、政府の為替政策に抗議して、大統領再選に反対の意思表示をした。しかし、本意は為替政策の反対であって、大統領の再選反対ではなかった。私の持論は弾劾要求も同じであると、ルーラ大統領も警告した。未だにPT内でも、再選反対論者と位置付けされ、誤解が解けていない。
【社会格差とPT】民主主義の目標は、格差社会の是正というより格差社会の調和ではないかと思う。民主主義社会では、相対的な社会格差を容認しなければならない。格差は労働意欲や意欲向上の動機である。理想的な平等社会は、個人の意欲を殺いでしまう。金持ちがいない社会は、ある見方では理想社会である。一方では文明の発展に乗り遅れた社会だ。
ブラジルにおけるユートピア建設とは、自分が所属する階級社会の中で仲良く築くもの。階層を破壊することではない。人間には、空気が合う階層と合わない階層がある。居心地のよいところが、自分の階層だ。吹き溜まりでも良い。負け組社会でも良い。一生芽の出ない枯れススキ社会でもよい。そこの人たちとの調和と会話が民主主義を築くのではないか。
【心酔する人物】三十五歳まではレーニン。前時代的で貧しい国ロシアを近代国家へ導いた功績、政治の基本や政治の組織化をレーニンから学んだ。三十五歳からは、ネウソン・マンデラ。彼は政治の天才であった。血を流すことなく政権交替を成し遂げ、伝統的な人種差別も廃止させた。
理論的には、二人の思想家から学んだ。ルネサンス時代にイルミニズモを起したアントニオ・グラムッシ。そして納得できる社会主義理論を唱えたイタリアのノルベルト・ボッビオである。もしも、この世界に民主主義なるものが存在するなら、それはボッビオの社会主義をおいてほかはない。