2007年4月27日付け
ブラジルで漆芸を広げられたら――。大阪芸術大学で彫刻を学び、輪島に渡って、二年間の修行、京都で様々な重要文化材の修復に携わってきた、漆の職人、中山貴子さん(29)。結婚をして来伯したあとも、作品を作り続けてきた。中山さんは、新作十点を携え、五月七日から十九日午前十時から午後五時にかけて、展示会「Requintes」を、レニーとカトリーニのギャラリー(Alameda Lorena, 1174 casa 3 ?Sao Paulo)で開催する。
「仕事が地味なので、日本でもやってる人は少ないです」。中山さんが、専門としているのは、〃沈金〃の手法。漆を塗った器物の表面に文様を彫り、金箔や金粉を塗りこむ技法で、蒔絵(漆で文様などを描き、金粉などをふりかけ、文様部分に固着させる技法)や、塗りの技法など、数ある漆加工の技術の中でも、珍しいようだ。「(訪伯前)ブラジルに行っても、日系人も多くいるところですし、漆を続けようと思ってました」。
ブラジルで漆を使うにあたっての、苦労もあった。中山さんは「漆は乾かし方で色や強度も変わるんです。サンパウロは乾燥していると思ったら、雨が降ったり。湿度を研究するのに時間がかかりました」。一年掛け、実験を繰り返した。
また、材料の調達も、現在は輸入するのみ。ブラジルで漆の工芸家としてともに活動できる人を探しているが、情報は少ない。「フランス人からベトナム産の漆を植えた、という話を聞いたのですが、ぜひ見つけてブラジルで育てたいですね」。
日本では、京都御所や高台寺の改修、さらに祇園祭で使われる長刀鉾や化粧柱の、百七十年ぶりの新調を担当する一方で、個人注文を受けて、漆器の製作をしていた。中山さんにとって、今回が初めての展覧会となる。
「作品は、銀や二十四金など、すべて天然の素材にこだわってます。沈金の仕事が分かりやすいように、製作段階の図案も用意しました」。展示会では、鶴や秋草文様、ブラジルの花などを彫りこんだ、手板と呼ばれる四角い漆の作品を十点ほど展示する。
「もとはアジアから来たものだけど、漆は日本でレベルの高いものに発展しました。ぜひ、ここ(ブラジル)でも日本技術を広めたいと思います」と、中山さんは展示会への来場を呼びかけている。
イナウグラソンは、五月六日午後二時から午後八時まで。