2007年5月4日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】二日、タイで開催された国連の気象対策会議(IPCC)は二〇二〇年までのエネルギー需要を補うため、サトウキビから抽出したエタノールを代替燃料として正式に指定した。世界最大の生産国ブラジルで産出するエタノールは、米国のトウモロコシから抽出するエタノールよりも二酸化炭素(CO2)の排出削減の面で効果的なオプションであると同会議が結論づけた。さらに国連が、トウモロコシのエタノールは食糧の作付面積減少と食料価格高騰につながると訴えた。
ブラジルは、異常気象の対策会議で責任を免れたようだ。同会議で中国代表が、地球温暖化の元凶は数世紀にわたって大気を汚染してきた先進国であると断罪したことで、ブラジルなど途上国は当面の負担は免れたらしい。現在は、中国がはからずも第二の大気汚染国となった。
ブラジルの他に、インドも中国と歩調をとった。国連気象会議が責任の転嫁会議になったことで、EU代表は外交戦略会議ではないと批判した。会議の目的は、ブラジルなどの専門家を含めて気象対策を検討するところだという。途上国は専ら、責任糾弾を盾に負担回避に立ち回った。
国連報告書は、地球温暖化の主な原因である自動車の排気ガス削減を促すため、特に先進国がバイオ燃料の導入に取り組むことを要求。排気ガスを放出して走る自動車は、世界で年々生産台数が増えている。当面のIPCC目標は、二〇三〇年までに地球の平均気温を摂氏二度以上上昇させないことだ。
報告書は、植物繊維から抽出するエタノール製造技術を短期間に実用化することを促している。これまでにも植物繊維セルロースからエタノールを抽出する研究は行われたが、実験段階で成功しても大量生産を可能とする決定打ではなかった。もし植物繊維からのエタノール生産が成功すれば、サトウキビ栽培にも影響すると思われる。
米政府は一月、植物繊維からのエタノール抽出開発に二億五〇〇〇万ドルを投じることを発表した。米政府はブラジルの専門家を招へいし、伯米合同チームを立ち上げた。同チームは七月までに、次世代エタノールの開発を目指している。
サトウキビはトウモロコシのような問題を引き起こさないが、問題がないわけではない。サトウキビを栽培できるのは亜熱帯に限られる。先進国の参入は亜熱帯のサトウキビに限定される。そのため、サトウキビの大規模栽培には条件に数々の制約がある。
このような制約下のサトウキビ栽培から生産されるエタノールの絶対量は、先進国需要をどの程度賄えるか疑問が残る。エタノール大生産国のブラジルと米国が協定を結び、他の先進国需要といかに向き合うかは不透明である。
IPCC会議には環境専門家も出席したが、発言権は与えられなかった。環境関係者はアマゾン熱帯雨林のような森林伐採の行方が関心事である。エタノール生産の規模拡大でサトウキビ栽培が奨励されれば、燎原の火のように森林伐採と農地の拡張が起きる。