2007年5月9日付け
「出る杭は打たれる、ということかもしれませんが、私も政治家、私に投票してくれた州民の期待を裏切ることはできません」。PSDB(ブラジル社会民主党)の決議に従わなかったとの理由から、党倫理評議会に除籍の申し立てをされている西森ルイス弘志パラナ州議は八日午前、ニッケイ新聞の電話取材に対し、苦渋の想いを語った。
まさに、ロベルト・レキオン同知事(PMDB=ブラジル民主運動党)を団長とするパラナ経済使節団二十五人を、西森州議が十七日から訪日に連れて行く直前のタイミングで問題にされ、同州メディアは一斉に報じて大騒ぎになっている。百周年を目前に、日伯の経済交流振興が政争の具にされようとしている。
八日付けオ・エスタード・ド・パラナ紙は「PSDBは不誠実議員の追放に動く」との大見出しで報じたほか、地元ラジオ、テレビ、新聞はこぞってこの件を報じた。
この騒動の原因は、連邦議員レベルで、与党PTに連立するPMDBに対し、最大野党たるPSDBが反発を強めていることが背景にある。今年に入ってPSDBが党議として「PMDBの発案に全て反対する」方針を固め、全所属議員に周知した。
ところが、州議になった四年前から西森氏はレキオン州知事と懇意にしており、ライバル政党にも関わらず議会で賛成票を投じてきた経緯がある。これが今回、党決議に〃不誠実〃として党倫理評議会にかけられた理由だ。
同州には七人のPSDB州議がおり、うち三人が同様の賛成票を投じてきたが、西森氏がリーダーだったことから白羽の矢が立てられ、見せしめ的に除籍の申し立てが行われたようだ。
しかも、この十七日からは、ライバル党のリーダー格であるレキオン州知事を連れて訪日する。PSDBからは、西森州議に「州知事と一緒に行くな」との命令が下っているという。ライバル党を利する不誠実な行為だとの声が挙がっているようだ。
それに対し、西森氏は「この役割は私にしかできない。パラナ百年祭への招待状もたずさえていく。エタノールや大豆輸出などの州経済全体に関わる大事な話がある。広い視野で見なければいけない。日伯経済のためには知事が行った方がいい」といい切る。
さらに「州民が私に投票してくれたのは、今までの私のやり方に対して理解してくれたから。党の言うことに従うのは、私の支持者を裏切ることになる。今までは連邦レベルではこのような話はあったが、州でも厳しく守らせるというのはなかった。しかも今回はパラナ州だけ」と反発する。
同パラナ紙によれば党倫理評議会は、除籍申し立てを受付けたが「いつまでに結果を出すかは決まっていない」とあり、決定というよりは、いわば様子見をしている状態。西森氏は「絶対に訪日する」との姿勢を貫いており、両者の主張は今のところ平行線を描いている。