2007年5月11日付け
NHKの連続テレビ小説の題名「どんど晴れ」は「めでたし、めでたし」「これでお終い」といった意味である。東北地方の主として南部地方で、お年寄りが孫に昔話をしてやったときの締めくくりがこの言葉だ▼筆者も父方の祖母からきいた。岩手秋田の県境の寒村の冬の夜、藁布団にくるまり、耳にした祖母の発音は「どっと払え」というふうだった。特にどういう字をあてるかは定まっていないのではないか。「どんど晴れ」は脚本作者の創作であろう▼ドラマでは一番お年寄りの世代がやわらかな南部方言を話している。若い層は、ドラマでも現実でも、方言はほとんど使わない。テレビの普及による日本語の画一化のせいである。NHKのど自慢の出場者たちの話だけを聞いていると、どの地方で開催されているのか、まったく見当がつかないほどだ▼コロニアで方言に大切にしようとしているのは、沖縄県人である。方言だけの演劇も試みる。もし、三世や四世が訪沖し、祖父母や曾祖父母にあたる年代の人たちに沖縄方言で話しかけたら、どんなにか喜ぶことだろう。方言保存継承の成果は、下世話ではそう表れるが、志すところは「言語文化を大事にしよう」だろう▼だが、現実はきびしい。沖縄県人の子孫たちは、まず日常ポ語を話さなければならないし、日本語学習となれば、標準語だろうし、方言への取り組みにはなお一層の努力が要る。方言保存は、推進者が「事業」としてすすめなければ成就は難しいようである。(神)