2007年5月19日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】サンパウロ市都心部にあるペロラ・バイイングトン病院では毎日、あらゆる年代層の女性が門を潜る。すべてが性的暴行を受けた被害者で、少なくとも三人から四人はレイプされたものだ。これにより一週間に少なくとも三人はレイプの被害者と認められ、妊娠中絶の合法的手術を受けている。同病院によると中絶の手術を受ける妊婦の四〇%は十歳から十七歳の未成年者だという。
サンパウロ州保安局の公的発表によると、昨年一年間にサンパウロ州でレイプの被害者は二五六〇人に上った。実に四時間に一件発生している勘定になる。内訳はサンパウロ市内が三一二件、大サンパウロ市圏が二三六件、残りが地方となっている。しかし犯罪専門筋はこれについてあくまでも表面上の数字であり、実数はかなり多いとみている。被害者十人のうち少なくとも五人ないし六人は被害届を出さずに隠すという。
サンパウロ市郊外に住む四十歳の女性もその一例だ。親友にのみ打ち明けたという女性は、孫がいることもあり恥ずかしくて公にできないとしている。女性は二カ月前の事件当日、歳に合わない短い黒目の服装をしていたのがレイプ犯人の目にとまったと自分にも非があったと認めている。
レイプ犯人は女性の下着をカミソリで切り刻んだ上で、顔にも同じことをすると脅して言いなりになるよう強要したという。さらにコトに及ぶに至り、卑猥な言葉を発することを強要、女性は悪魔のような目つきが頭から離れないとして、その後一切外出を取り止めている。
いっぽうで四十二歳の女性はレイプによる生後十カ月の女の子を養っている。この程、男を強姦罪で告発した。男は女性の別れた前夫で、今回の女の子は前夫との間での七番目の子供となる。子供は全員女性が育てた。前夫を告訴した理由について、女性は確たる返答ができず、ただ「男が死ねばいい」と洩らすに止まった。
一九九四年からこの種の犯罪被害者の治療に当たっているペロラ・バイイングトン病院によると、過去数年間、性的暴行事件は横ばいの傾向にあるという。ブラジルの状況はコロンビア、カナダ、メキシコと大差なく良くもなく悪くもないとのこと。その上でカナダでは二四%、アメリカでは二五%の女性が同意のない不本意なセックスの経験があるという。
しかし、未成年者の被害は増加している、同病院によると、未成年者のリスクは成年女性に比べ四倍高いと指摘している。未成年者は防御あるいは回避へのメカニズムが備わっていないのが原因だという。
さらに被害者の九〇%は相手が顔見知りであり、ついつい気を許して油断しているところを狙われる、脅迫されて泣き寝入りするのが、ほとんどで、お腹がせり出して家族が妊娠に気がつくケースも多々ある。レイプによる合法的中絶は二〇週間までと定められており、手遅れで不本意な出産を強いられる女性も多い。